天と海を支える女巨人C 天狗裸女登場
軍医タコ一行は『アナザー・エデン』へと向かった。
自動操縦の小型タコ型宇宙船には、軍医タコと尻目……それと透明な強化プラスチックの三十センチほどの立方体ボックスに、ギュウギュウ詰めで押し込まれた隊長タコが荷物扱いで積まれていた。
時折、呻き声が聞こえる隊長タコが入った手提げボックスを見ながら、尻目が軍医タコに訊ねる。「隊長さん大丈夫ですか? 密封されて呼吸困難になりませんか?」
「ボックスには空気穴が開いているので大丈夫ですよ……空気穴から金魚のエサを与えて世話もしないといけないので、連れてきました」
軍医タコはボックスの穴にホースの先を突っ込んで、水タンクから水を注ぎ込む、隊長タコの口がパクパクと動いて給水する。
「今回の隊長は母船に残すと、何をしでかすのかわからないので。犬猫を運ぶペット用のカゴでもあれば良かったんですが、自作で核弾頭の爆発にも耐えられる素材で運搬ボックスを作ってみました〔製作時間十分〕……トイレは隊長ごとボックスを水洗いすればOKです」
そう言って軍医タコは、ボックスの壁を触手でトントンと叩いてみせた。
小型タコ型宇宙船の外には、三角翼の飛行生物をハンググライダーのように背中に付着させて、平行して飛んでいる女秋の姿があった──軍医タコが言った。
「もうすぐ『裸族人類が存在する退屈でない世界』の半球と上に乗っているディスク世界の中間点に到達します……ほらっ、見えてきました二つの世界を支え繋いでいる女体巨人の柱が」
前方に流れる母乳の雲の中──頭上に両腕を伸ばし、ディスク世界を支えて。半球世界の海に立つ超々巨大な裸の女の柱が現れた。
女巨人の体には蔦〔つた〕のような道と線路が、裸体に巻きつく形で貼りついている。
女巨人を見た尻目が驚きの声を発する。
「な、なんですかアレ?」
「『天と海を支える女巨人』です……アナザー・エデンの底にくっついて一緒に飛んできたみたいですね……両方の世界から道や鉄道が作られ、今や巨人の体内には住人もいて、町や村まであるそうですよ。今回は巨人の体内には行きませんけれど」
よく見ると交通網は女巨人のマ●コ穴やア●ル、ヘソ穴・口穴・耳の穴にまで入り込んでいた。
軍医タコが言った。
「半球世界側〔地球〕から見れば、海に立ってディスク世界を支えていますが。ディスク世界側〔アナザー・エデン〕から見れば逆立ちをしているように見えます……尻目さんの知り合いの天狗裸女さんは、あの巨人の乳頭で修行をしているんでしたね」
「はい、なんでも『乳頭平原』にいるとか」
「では、巨人の乳頭に着陸して天狗裸女さんを拾って行きましょうか」
小型タコ型宇宙船は、女巨人の片方の乳頭の先っぽに着陸した。
宇宙船から出てきた尻目が言った。
「乳頭の上は、なーんにも無い平原ですね」
タブレットを操作して乳頭情報を集めている、軍医タコが言った。
「乳頭の根元の方に行けばコンビニエンスストアーとか、※1ファストフード店みたいな系列チェーン店がありますよ……他にもいろいろな店の※2乳頭店ありますね……商魂たくましいですね」
タブレットを仕舞って軍医タコが言った。
「さてと、尻目さんの知り合いの天狗裸女さんは、どこにいるのでしょう?」
その時、1トンを越える大岩がどこからか飛んできて、軍医タコたちの近くに落下した。
「これは“天狗礫”〔てんぐつぶて〕ですね」
思わず抑揚の無い口調でツッコミを入れる秋。
「いやいや、礫〔小石〕じゃないから」
次に大木がどこからか飛んできて、岩の近くに落ちる。
「これは“天狗倒し”の怪異ですね……天狗近くにいますね」
「いやいや、天狗倒しは音だけの怪異で、木は飛んでこないから」
そして、頭上から天狗の高笑いが聞こえ、見上げると裸の女天狗が背中の翼を羽ばたかせて、空中に浮いていた。
「わはははは……誰じゃ、儂の修験場に侵入してきた不埒〔ふらち〕な輩は」
鼻が長く背中に翼が生えた裸の女、手にはヤツデの葉のウチワを持ち、腰には縄を結んだ朱塗りのヒョウタンを提げ、一本歯の高ゲタを履いていた。
※1 チキンやドーナツやアイスクリームやクレープやたこ焼きや、ドライブスルー可能なハンバーガーショップなどがあります。
※2 某ファミレスや某牛丼チェーン店、某コーヒー店や某カレー屋、某うどん屋や某ラーメン屋、某ステーキ店、某ハンバーグ店などがあります。
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