涼宮ナツキの策略 エピソード3 お姉ちゃんと別れると、あたしはその養成学校に向かった。久しぶりに戻ってきた未来のビルは背が高くて、見上げていると首が痛くなる。キョウくんたちにも見せたいけど、現代とは記憶媒体が違うので、見せてあげられないのが残念なんだけど。 「あれ?」 養成学校の高いビルの前に、あたしと同じくらいの子がうろうろしていた。どうしたんだろ、財布でも落としたのかな? 「こんにちは」 あたしはその子に声をかけてみた。あたしと同い年くらいのその子はあたしを見ると二、三歩後ろに下がった。 「こ、こんにちはっ!」 妙に肩の力が入っていて、表情もかなり強張って(こわばって)いた。何でそんなに緊張してるんだろ? 「どうしたんですか?」 緊張をほぐそうと、あたしは笑顔で尋ねた。すると、その子はちょっとだけ頬を赤らめた。 「え、えっと……私このスクールの強化合宿コースに申し込んだんですけど、なかなか中に入れなくて」 強化合宿コース? 確かあたしの証明書にもそんなことが書いてたよね。 「じゃあ、あたしと一緒だね! あたしもここの強化合宿コースに申し込んだんだ」 あたしが言うと、その子は小さい子どものような笑顔を見せて、 「よかった、実は一人ですごく不安だったんです」 と、安堵の溜め息をついた。 「私、白都いくって言います。あなたは?」 すっかり安心したのか、白都いくさんは自己紹介してくれた。 「あたしは朝比奈美春。美春って呼んでくれていいよ。友達はみんなそう呼ぶから。あなたのことは何て呼んだらいいかな?」 すっかり気をよくしたあたしがそう言うと、 「いくでいいです」 と、ぼそりと呟いた。 「そっか。じゃあ、いくちゃんでいいかな?」 「は、はいっ! み、美春さん!」 まだまだ緊張は抜け切れてないけど、いくちゃんとはいいお友達になれそう! [*前へ][次へ#] [戻る] |