涼宮ナツキの策略 エピソード4 いくちゃんと建物の中に入ると、目の前には先の見えないほどのロビーが広がった。ただでさえこんなに広いんだから、いくちゃんがなかなか1人で入れなかったのも無理ないかも。 とりあえず、あたしはお姉ちゃんに言われた通りリリス・オランジェ先生を呼んでもらうことにした。 「どうしたの、いくちゃん?」 建物に入ってからのいくちゃんはますます小さくなって、あたしの背中に隠れるように歩いていた。何だか小さく震えてるのかな? 「わ、私、人がいっぱいいるところは苦手なんです」 そう言って、また隠れるいくちゃん。あたしはそんないくちゃんのお姉さんみたいな気分に浸っていた。 あたしは受付でリリス・オランジェ先生を呼んでもらうように頼んだ。いくちゃんと一緒にソファーに座って待っていた。 しばらくすると、あたしやいくちゃんより小柄な、見た目は中学生くらいの女性があたしたちの前に現れた。 「あなたが美春ちゃんかしら?」 その女性があたしの名前を呼ぶと、あたしは身震いしてしまい、いくちゃんはただ固まっていた。 「あたしがリリス・オランジェです。あなたは朝比奈美春ちゃんよね?」 小柄な身長に似合わず、威圧感を身に纏っている。あたしは首を縦に振ることしかできなかった。これがこの世界のエキスパートの風格なのかな。 「あなたが白都いくちゃんでいいかしら?」 いくちゃんはあたしよりひどかった。固まったまま動かない。 「あー、もー! 2人とも緊張しすぎだよ」 いきなりリリス・オランジェ先生は緊張の糸をバッサリ切った。あたしはますます反応に困ってしまう。 「とりあえず、教室に行こっか。他のみんなも待ってるし」 さっきまでの威圧感はどこ吹く風で、リリス・オランジェ先生はマイペースで話を進めていく。あたしは緊張で何も言うことができなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |