涼宮ナツキの憂鬱 第四十八話 俺と一樹先輩が部屋に入ってしばらくすると、団長様が勢いよくドアを開けた。 「やっほー」 ここは山じゃないんだ叫ぶな。 「うるせえな。ってその紙袋はなんだ?」 「内緒」 上機嫌時のナツキは必ず他人の迷惑になりそうなことを考えているに違いない。ナツキが紙袋をドスンと置くと長門さんはビクンとする。 「今度は何をする気だ?」 「宣伝よ」 そう言うとナツキは俺たちにチラシを配った。よくもまあご苦労なこって。別に見たくなかったから俺はプリントをたたんでポケットにしまいこんだ。 「じゃあ配りに行くわよ!」 「どこでだよ」 「校門。今ならたくさん生徒もいるでしょ?」 「そうですか」 俺は重い腰を上げると、 「あんたは来なくていいわよ。来るのは美春ちゃんと亜紀ちゃん」 「え?」 長門さんと美春は首をかしげる。ナツキはもう一つの紙袋をごそごそかきまわして猫型ロボットのように得意気にブツを取り出した。 「じゃーん」 黒の胸あて、パンツ、つけ耳、フサフサの長い尻尾……どこからどうみても猫娘の衣装だった。 「あの、それはいったい……」 怯える長門さんに、 「かわいい!」 はしゃぐ美春。 「知ってるでしょ?猫ちゃん」 得意気に言うナツキ。 「まさか私が?」 「もちろんよ!」 「いやです!」 「うるさい」 「うるさいのはお前だ!」 俺が叫ぶと一瞬にして辺りが静まりかえった。 「何よ?」 「お前なあ、この二人をどうするつもりだ?」 ナツキはブスッとした顔で反抗する。 「あんた見たくないの?」 見たくないと言ったら嘘になるが、それよりこの二人の名誉に関わるだろ。美春はともかく長門さんとか特にな。 「アホかお前は。そんな事すると設立そうそう潰されるぞ?」 「むぅ……」 よし勝った。 「ここ潰されたら俺との約束はどうなるんだ?」 ちょっとカマをかけてみた。 「わかったわよ!じゃあ制服ならいいの?」 「それなら許す」 ナツキは不満そうな顔で衣装をゴソゴソ片づけていた。 [前へ*][次へ#] [戻る] |