バイバイ、ハロー、-03
―ガタン、
肩を掴む手の力が緩んだ隙に、大人は腰をあげた。
振りほどかれた両手は宙を巻い、行き場をなくす。
顔なんて見たくない、冷めた目をして自分を見る顔なんて見たくもない、咄嗟に俯き、見下げているだろう大人の視線から逃れる。
すると、何かが身体を覆った。
「…それは、こっちのセリフ、なんだけど」
耳元で囁かれる声に、オレは抱きしめられているのか、と現状を把握する。
だけど発せられた言葉の意味も、この行動の意図もわからない。
「…オレが言うのもなんだけど、オマエ毎回上の空だったでしょ、オレとシてるとき、」
「……そんなこと、」
ない、とは言えなかった。
何か別の事を考えていないと、気持ちが隠し通せそうになかったから、
好きだと縋りついてしまいそうだったから、
「だからオレは、望みなんてないな、って、そう思って…、」
…望み?
そんな、ありえない、
だってそれじゃあ、まるで―
「好き、だった、じゃないとあんな事、しない、」
好き?先生が、オレ、を?
「じゃあ!じゃあ、なんでここ最近オレの事避けてたんだってばよ!!」
抱きつく身体を突き放し、先生の顔を見上げれば、想像していた冷めた瞳なんてそこにはなくて、見てるこっちが悲しくなる程切なげな顔。
「だって今日、オマエは居なくなるんだよ?もう、終わらせないといけないんだ、だから、忘れようと、諦めようと、必死で…、」
あぁ、オレも先生も、なんてバカなんだろう。
もっと早く気持ちを伝えていれば、こんなことにならなくてすんだのに。
「せんせー、」
「…ん?」
「オレは今日、この学校を卒業するけど、」
「…うん、」
「…せんせーからは卒業しなくていい?」
さようなら、
(愛の見えない、苦しい日々)
こんにちは、
(愛に溢れた、幸せな日々)
→オマケ
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