バイバイ、ハロー、(オマケ) ――卒業式の、約8ヶ月前 キーンコーンカーンコーン 「うずまき、昼飯食べたら職員室ね。」 数学担当で、担任でもあるカカシにそう呼び出しをくらい、思い当たる節がありすぎるナルトは顔を真っ青にした。 「なぁ、なんだろう、何がバレちまったんだ!?つか、何でオレだけ!?!?」 イタズラやサボリは数え切れないくらいしてきた、ソレは認める、だけどサスケやシカマルを始めとした所謂、悪友との共犯なわけで。 「さぁ、行けばわかんだろ。」 「そうだな、早く行ってこい、ウスラトンカチ」 「オレ達を巻き込むんじゃねーぞー」 「ナルト、ソレ食べないの?なら僕が食べてあげる。」 呼び出しをくらったのが自分じゃなければ何の問題もないらしく、友達がピンチだと言うのにとんでもなく薄情な奴らだ。 「オマエら冷てぇーってばよ、」 いそいそと弁当やらパンを広げ、他人事の様に(実際、他人事なのだけれど)昼食を取り出す友人達を見ていると食欲なんか湧いてこなくて、 「……行ってくる、ってば」 昼飯、食ってからでいーっつってなかったか?という友人達の声を無視して教室をあとにした。 「…失礼しますってばよー、」 職員室の扉を引いて、中を覗けば、窓際にある喫煙スペースでコーヒー片手に談笑しているカカシと目があった。 ちょいちょい、と手招きされて、素直に側まで近づけば、また何かしたのか?と、カカシと談笑していたアスマや紅が呆れ顔で聞いてくる。 「さぁー…?」 ソレに苦笑いでとぼければ、なんだそりゃ、と返された。 何で呼び出されたのかなんて、こっちが聞きたい。 呼び出した本人であるカカシに目をやれば、いつの間に口をつけたのか、手元にあるコーヒーカップは空で。 「…オマエもう昼飯食べたの?」 早食いはあんまり良くないよ、なんて言ってきた。 「まだ食ってねーってば、ってか、なに?」 説教なら早いうちに済ませたい、急かすようにそう言えば、カカシは呆れ顔でついておいで、そう一言告げるとスタスタと職員室を出て行った。 なんで職員室をでる必要があるんだ、どこに行くんだ、いくら聞いても無視するカカシに連れられたのは、数学準備室。 「こんな部屋あったんだ、」 扉を閉めながら思わずそう漏らせば、先を歩いていたカカシが振り向き、 「存在感ないからね、此処。」 サボリ場には最適でしょ、と笑った。 いつの間にか外されたマスク、初めて目にする素顔。 いくら頼んでも見せてくれる事なんてなかったのに、 「なん、で…?」 「なにが?」 扉の前で呆然と立ちすくむナルトに、カカシはゆっくりと近づく。 「あぁ、呼び出された理由?」 それもある、だけど、 「こないだのテスト、数学赤点だったでしょ。クラスでオマエだけだよ?」 気づけば鼻先が掠れる程近づけられた距離、 「…ヤバい、ってば?」 心臓がドキドキ煩い、逸らしたいのに逸らせない、 「はっきり言ってヤバいね、このままじゃ卒業は無理。」 「え、」 言うと同時にカチャリ、静かな教室に鍵の閉まる音が響いた。 ソレに反応し後ろを振り向けば、やはり施錠されていて。何故かソコにはカカシの手が添えてあって。 カカシに向き直り、なんで?、そう問う間もなく、 「…でも、先生の言うこと聞いてくれたら、単位、あげなくもない、よ」 耳元でそう囁かれた。 「…言うこと、ってなに?」 イケないことなんだろうな、なんてのは安易に想像がついたけど、欲には勝てなくて、 「……ナルト、」 初めて呼ばれた、名前が妙に愛おしい。 「…んッ、」 近づけられた唇を、抵抗することなく受け入れた。 「やっぱ、どう考えても職権乱用だってばよ!」 「…なにが?」 結局卒業式をサボった二人は、始まりとも言えるあの、数学準備室で、相も変わらずイケないことの真っ最中なのだけれど。 愛しい金色は、何故か急にご立腹なようで。 「つか、オレ以外にもあーゆー事言って、こーゆー事してたんじゃねぇだろな!!」 あーゆー、とか、こーゆー、とか、結局何が言いたいのかわからない。 っていうか、いま良いとこなんだけど、 「えっと、急にどうしたのかな、ナルトくん。」 「だーかーら!単位あげるとか言って、襲ってたんじゃねぇの!?」 あー、ソレ。っていうか、そんなの教師失格でしょ。まぁ、ナルトに手を出した時点で教師失格、か。 「あのねぇ、そんなのに引っかかるのなんてオマエくらいだよ。」 「……ホントかよ。オレがいなくなるからってさ、次は新入生とかに手ぇ出す気なんじゃねぇの?心配ったらありゃしねー。」 随分、信用ないねぇ。 うーん、ナルトがそこまで言うなら仕方ない。 「…そんな心配なら首輪でもつけてれば?」 「バッカじゃねーの?そんなん、できるわけねーってば。」 そうでもないよ。 とりあえず、4月が楽しみだ。 ね、ナルト。 それから約1ヵ月後の4月1日、 父親が経営する会社に就職したナルトは、自分の上司を紹介されて驚くこととなる。 ナルトの父親であるミナトは、カカシの父親であるサクモの後輩で、コネを使ってこの度、転職。 カカシの頭の良さを把握しているのと、息子の担任だったということで、これからも世話を頼む、とナルトの上司として配属されたのだ。 教師と生徒から、上司と部下へ。 初日からのカカシのモテっぷりに、なにかまた、一波乱ありそうな、なさそうな、 まぁ、それはまた、べつのおはなし。 [←] |