[携帯モード] [URL送信]

偽り
40


明日はいよいよ学園祭だ。なんだかんだで準備も順調で俺のクラスのお化け屋敷も無事完成した。他のクラスの出し物もいい感じに出来ていて、一通り見たけど、メイド喫茶という看板を見たときは正直引いた。
男子校でメイド喫茶はないだろうと思ったが貼りだされているメイドの写真を見たらどれも女の子に負けない可愛さだったから何だか悲しくなった。
忘れることにした。
俺は当日お化け役をするからあまり見て回れないだろうと思い、今適当に見て回っていた。というか暇なのだ。

「でも、やっぱ、無駄に金かけるだけあるよな…」


今まで見てきたもの全て予想通りのすごさで少し呆れていた。もう、何も気にしないことにする…。



「……………あ、」


渡り廊下を歩いていた俺は、庭にあるでかい木の下のとこに寄りかかって寝ている会長を見つけてしまった…。

「…………」

会長は顔とか腕とか傷だらけで見てるこっちが痛くなってしまうほどの怪我をしていた。…大丈夫なのか?


俺はもう少し会長に寄ってみて少しの間眺めていた。

「……うわー…、頬の傷痛そう…」

特に左頬にある切り傷みたいな傷がとても痛そうで思わず口に出してしまった。だけど、こんな状態の会長をどうすることも出来なくて、2、3歩離れてどうしようかと悩んでいた。


「………」


てか、なんで俺が会長のことで悩まないといけないんだ。こいつは俺に酷いことをしたんだぞ。今思い出しても腹が立つ。


「………」

けど、そうは思っても少しは心配してしまう俺なわけで、なんとなく上着のポケットに手を入れた。


「………あった」


ポケットの中には前、指を切ったときにもらっていた絆創膏がまだ残っていた。

「………どうするか…」


絆創膏と会長を交互に見ながら悩んでいた俺だったけど、これじゃぁ拉致があかないと思い、静かに会長の側まで行きそっと絆創膏を頬の傷に貼った。


「………ふぅ、これでいい」

なんとなくただ張るだけじゃつまんなかったから普通の絆創膏じゃなく、うさぎのイラストつきの絆創膏を貼ってやった。
あの時のお返しだ。
そう思い、少し優越感に浸りながらその場から離れようと足を一歩踏み出した。


「おぉぉっ」


俺の大きな声とともに、体が引っ張られ、目をあけると目の前にはきれいな青空と会長の怒った顔があった。
俺はまたやってしまったのか…。少し怯えながら会長をじっと見つめていた。というか、びっくりして固まっていた。


「………何をしていた?」
「え、あ、その、か、…仁神様が傷だらけ、で…心配になって…」
「………」
「…………えっと…」


なんとか演技しつつどうにかこの状態から脱出できるか考えていた。会長に押し倒されるとかありえない…。この状態があまりにも酷でほんとにどうしたらいいのかパニくってたら、会長はスッと俺の上から退いて何も言わず校舎の中に入っていった。


「……なんだったんだ?」

いまいち会長の行動が理解出来なかったけど、とりあえず助かったことに安堵し、会長がいなくなったのを確認して教室に戻った。
この時もう二度と会長には近づかないと決めた俺であった。



[*前へ][次へ#]

40/58ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!