偽り
41
仁神side
「………」
誰もいねぇ廊下を歩く俺はものすげぇ苛ついていた。いつものことだが今日もまた喧嘩をしてこのありさまだ。いつもなら簡単に勝つんだが今日の奴はナイフを使ってきやがって少し苦戦した。もちろん勝ったが顔に傷をつけられたことがマジでムカつく。
「くそっ」
壁をおもいっきし殴った。
暴れたりねぇ…。
「壁、壊さないでよね」
後ろから聞き覚えのある声がした。
「………」
「へぇー、無視するんだ」
「…雅、俺は今すっげぇ苛ついてんだ、話かけんな」
「ふふ、偶然だねー、僕も今とってもイライラしてんだ、誰かさんが仕事サボるから」
「…………」
「黙ってないで、こっち見たら?」
俺は仕方なく後ろを振り返って雅と向き合った。
雅は持っていたプリントを見ながら俺に渡すプリントを探していた。
こいつだけにはなぜか適わねぇ…。情けねぇ。
「はい、景はこれ、今日中によろしくね……」
「……あぁ、」
雅とは目を合わせないで渡されたプリントを受けとった。
「………景、今日、喧嘩した?」
「………わりぃかよ」
「ううん、悪くはないけど、…ふふ、」
「…………何がおかしい」
「だって、………ふふ」
「あぁー、何だよさっさ言えよ」
「景、その頬の絆創膏どうしたの?」
「あぁ?絆創膏?」
雅に頬を指され、俺は自分の左頬に絆創膏が貼られていたことに気がつく。
「………いつのまに」
「気づいてなかったの?」
「あぁ…」
「ふふ、それにしても、その絆創膏貼った子、なかなかやるかも」
「……なんでだよ」
「ほら、鏡で見てみたら?」
雅にそう言われ、廊下の壁にある鏡で俺の顔を見た。
「な、なんだよこれ!」
「何って、うさぎの絆創膏でしょ」
笑って可愛いと言ってくる雅は無視だ。
俺の頬に貼られていた絆創膏はうさぎのイラストつきの絆創膏だった。
ありえねぇ…。
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