それが恋、それが愛
16
「こ、これは…」
下駄箱の前で震えている俺は猛烈に現実逃避したかった。
「……日野、どうした…って…日野それ…」
「……遥くん、これって…」
「……日野」
「いじめだよな?!」
俺はそう叫んでいた。
俺は普段通り学校に登校して、靴を上履きに履き替えようと玄関にきた。
そんな俺の下駄箱が酷い悲惨なことになっていて、置いてあった上履きがびしょびしょに濡れていた。
これじゃ、履けない…。
「うわっ…これは、酷いな…」
「………うん」
下駄箱の悲惨な状態に遥くんは顔をしかめた。
「もしかして、…女子の仕業?」
「……たぶん、中学のときも何度かあったし…」
「日野…、苦労してたんだな、」
俺の肩に手を置いて俺を慰めてくれる遥くん。
そんな遥くんにお礼を言いつつ、俺は上履きをどうしようか考えていた。
幸いにも、上履きは水で濡れていただけで、乾かせばなんとかなると思った俺は、保健室に行ってドライヤーで乾かそうと、濡れている上履きを手に取った。
「遥くん、俺、保健室行ってドライヤーで乾かしてくるよ」
「1人で大丈夫か?」
「大丈夫」
「…わかった、先生には俺が上手く言っとく」
「…ありがと」
そう言って俺と遥くんは玄関で別れた。
「……はぁ、またこんな日が来るなんてな…」
そう呟きながら俺は1人保健室に向かった。
向かうとき、周りから見られてたけど俺はあまり気にしない。
…慣れって、怖い。
そんなことを思いながら俺は廊下を歩いて行った。
****
「日野、大丈夫だったか?」
「おぅ、ばっちり乾かしてきた」
教室に戻ってきた俺は心配して声をかけてきてくれた遥くんに、ぶいサインして履いてる上履きを見せた。
「そっか」
「…よかったよ、今回は水で…」
今日のいじめがただの水でほんとに良かったと俺は苦笑した。
「…ちなみに…中学時代は?」
そんな俺を見て、遥くんが中学時代のことを聞いてきた。
「…たしか、中1のときが牛乳で、中2のときは…トマトジュースだった…かな」
「中学生って…案外怖いな…」
「…まぁ、友達もいたし、なんとか大丈夫だったけど…」
「……日野」
つらかったな、と俺の肩を叩き、遥くんは同情してくれた。
…ほんと、あれはつらかった。
嫌な思い出でしかないから忘れていたのに…。
はぁ、…これから大変だろうな…。
そう思いながら俺は授業の準備にとりかかった。
教室にはほとんどの女の子がいなかった。
また、あいつでも見に行ってんだろうな…。
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