それが恋、それが愛 8 **** 「……はぁ、……遥くん、部活頑張ってるな…」 屋上からフェンス越しにグラウンドを見てそう呟く。 女の先輩からやっと解放された俺は、座って屋上からグラウンドを眺めていた。 自然とため息が出る。 先輩たちから、これ以上椎名に近づかないで、と言われ、俺はなんとも言えない気持ちになった。 「…いや、近づいてるのはあっちだから…」 俺は不満でいっぱいだった。 俺にどうしろと言うんだ。 何故か先輩たちは俺があいつに媚びてると思ってるらしく、俺は完全なるとばっちりを受けている。 こんなの俺が被害者で、俺が怒られるっておかしいと思うんだ…。 「……はぁ、入る高校間違ったかな」 ここに入ったことを後悔し、ため息をつく。 そんな俺に大きく手を振っている遥くんが目に入った。 俺も笑って遥くんに手を振り返す。 「…いいや、遥くんに会えたし」 一度は後悔したけど、遥くんとまた再開出来たことを思い出して、ちょっと気持ちが楽になった。 俺はそのまま手を振りながら遥くんを見ていた。 すると横に誰かが来た気配を感じ、俺はチラッと横を見た。 俺の顔が引きつるのがわかる…。 「………なんで横に座るんだよ」 横に座ってきた椎名に、俺は文句を言った。 そんな俺に椎名は俺の勝手だろ、と言ってフェンスに寄りかかり、ポケットから煙草を取り出す。 その態度ににムカついた俺は、椎名を無視してグラウンドを見た。 最初はここから立ち去ろうとも考えたけど、なんで俺が動かないといけないんだ、と思い直し、黙って遥くんが走ってる姿を眺めていた。 そんな長い沈黙の後、あいつが俺に話しかけてきた。 「………お前、あいつと仲良いのか?」 「………あいつって誰だよ」 「……先頭走ってるヤツ」 「遥くん?」 「………名前で呼んでんだ」 「遥くんとは幼なじみだし、…てか、…なんでそんなこと聞くんだよ」 「…別に」 遥くんのことを聞いてきた椎名は少し不機嫌だった。 しかし、フェンスに背中を預けて座っている椎名はやっぱり態度が悪くて、俺はムカついた。 「………なんだよ、その態度」 「…俺、いつもこんなだけど」 「……違うくせに」 グラウンドを見ながらそう呟いた俺はどこかおかしかった。 いろいろあったせいか、何かが爆発しそうな俺は、自分で感情をコントロール出来ず…、 椎名にぶつけていた。 [*前へ][次へ#] |