それが恋、それが愛
9*
「……日野、お前、何かあったのか?」
「うるさいっ」
「…………」
俺は椎名にそう叫んでいた。
「俺はお前がわかんない……」
「…………」
「……女の子たちに責められるわ、…女の先輩に呼び出されるわ……俺が何したって言うんだよ」
「…………日野」
俺は自分の気持ちを止められなかった…。
「…俺のこと嫌いなら嫌いでいい、…けどお前、俺と仲が良いとか周りには言ってるみたいだし…ほんと意味わかんねーよ…」
「…………っ」
「俺がお前にな、ん――っ?!」
俺の言葉が言い終わる前に、俺は椎名にキスされた。
「んっ………ぷはっ、お前何し…んっ?!」
何度も何度もキスしてくるあいつから逃げることが出来なくて、俺は床に押し倒される。
「……わかってねぇのはお前の方だよ」
俺を押し倒したまま、椎名がそう呟いた。
キスから解放された俺は、そんな椎名をただ、じっと見つめていた…。
「……ほんと、お前何もわかってねぇよ」
「…はぁ、お、俺が何をわかってないんだよ…」
「……そんなの自分で考えろ」
「なっ、てか、お前俺にキスして、何のつもりだっ」
椎名に押し倒されたまま、文句を言う俺は顔が熱い。
「…ほんと何もわかってねぇな」
「……い、嫌がらせかっ」
椎名の行動に戸惑いながらも、俺はそう言って椎名に叫んだ。
「嫌いなヤツにキスなんかするかよ…」
「じゃ、じゃぁ…、なんで俺にキスするんだよ…」
椎名の言ったことは矛盾していて、俺は激しく動揺した。
「はぁ、…お前はどんなヤツだったらキスするんだよ」
呆れ気味に聞いてきた椎名に俺は戸惑いながらも返答する。
「……それは…やっぱり、好きな子に…」
「俺もだよ」
「え?」
同意の言葉の意味がよくわからなくて、俺は椎名に聞き返していた。
「俺もお前と一緒で好きなヤツにしかしない」
「……好きなヤツって、お前、さっき俺にキスしたじゃねーかっ」
「……あぁー、だから、
俺はお前が好きなんだよ」
「は?」
椎名のあり得ない発言で、俺は固まり、頭の中で必死に整理していた。
「…お前、どんだけ鈍いんだよ」
そう言って、俺の上から退いた椎名はフェンスに寄りかかり、煙草を吸い出す。
俺は起き上がって椎名を見た。
俺の顔はみるみる赤くなった。
顔が熱い。
「…お、俺は男だ!」
「知ってるし」
「…………」
照れながらもなんとか絞り出した俺の言葉は、椎名のその一言によって打ちのめされた。
また、顔が熱くなるのがわかる。
「お、俺は…」
「………」
「俺は、お前なんかに騙されるもんかぁぁぁぁ!」
そう叫んで、俺は屋上から飛び出して行った。
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