飼い犬になります
9
「ふ〜ん。啓太が言いたい事はわかった」
色さんの声が変わった。
「俺は啓太を自分の懐でドロドロに甘やかしたいくらいには気にいってるの。で、啓太をもっと俺だけに懐かせたい。もっと明け透けに言うと、好きになったかな〜」
「色、さんが、……俺なんかを好き……?」
「自分でもさ、啓太は特に可愛いくもない顔だし、その辺によくいるような平凡君だし、どうでも良かったんだよね。でもさぁ、あんだけ『色さん色さん』って尻尾振ってこられたらね、もう可愛がるしかないし。啓太って時々すごいボケかましたり面白いし。喧嘩弱すぎだし」
「俺っ……どうしたら…」
言葉に詰まる。
どうしたらいいかなんて色さんに聞いて、それこそどうすんだよ俺。
それに、この真っ赤に染まった顔。
心臓が壊れるんじゃないかってくらい脈打ってる。
「ま、返事はイエスかはいしか認めないけどねぇ〜」
瞬間、逆さまの綺麗な顔が降りてきた。
とっさに目を瞑ってしまう。
チュッ
チュッ
上を向いた体制なので自然と薄く開いてしまう口に、すかさず色さんの舌が入りこんだ。
「っは、ぁ、むう……んんっ……はぅ、ぁ、…んぁ」
息も絶え絶えだ。
色さんを俺が拒絶できるはずもなくて、ひたすら色さんにされるがままだ
一通り満足したのか、色さんが離れる。
俺はそのままソファに倒れ込む。
軽く酸欠だった。
フワフワの脳みそで何も考えられなかった。
ただ、色さんのキスは甘くて、少し苦しくて気持ちよかった。
「啓太、命令」
いつの間にか、俺に覆い被さるようにした色さんが目の前に。
「『色さん、抱いてください』って言ってごらん?」
「……えっ、色、さん?」
「ほら、早く」
「っあの!」
「言うこと聞けないわんわんにはお仕置きするよ?優しく言ってるウチにね?」
大好きで、憧れで、色さんの言うことなら何でも聞けるんだ。いつだって守ってくれた。
なのに、今は怖くて仕方ないなんて。
色さんの目の色が、本気だと告げていた。
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