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飼い犬になります


「あ、……はい」

スルッと色さんの腕が俺の首に回る。
耳元に色さんの息がかかる。そのたびにビクビクしてしまった。


「俺さぁ〜わんわんのことは昔から可愛がってたよね〜?」

「…はい」

「今日もさぁ、軽〜い気持ちでわんわんに俺の犬になる?なんて言ったのにさ、わんわん、ちぎれんばかりに尻尾振って嬉しそうにするもんだから、さぁ〜。ペットにしようかと思ったの。でもねぇ………気が変わった」


耳元から口は離さずに俺の頭から首、肩の方まで色さんの手が行き交う。


「啓太、俺のことどんくらい好き?」


俺が色さんのことをどれくらい好きか。
話の筋も質問の意図もまったくわからなかった。
でも、色さんに命を預けられるくらいは好きだ。
大袈裟かもしれないけど、色さんは俺にとってそのくらい大事なんだ。


「色さんの為ならなんでもできるくらい大好きです!!色さんの命令ならなんでも聞けます!でも!チーム、やめたくないです!色さんの近くにいたいよぅ……」


力強く、気持ちが伝わるように言ったつもりが、最後はやっぱり涙声になってしまった。



「ほらほら、泣かない泣かない〜。チームを辞めないならさ、提案があるんだけどぉ、啓太、」


色さんは袖口で俺の涙を拭った。そして、両頬に手を添えて、俺の顔を上向きにさせる。
逆さまに色さんと目を合わせた。


「啓太、本当に俺の犬にならない?」

「い、犬?」

「そぉ、わんわん。つまり、総長にとっての恋人が猫だから、俺の犬にならないかってこと」


それは、つまり………色さんは俺に………まさか!?
最初に犬になるって聞かれた時は、俺はただの色さんのペット感覚だったわけで。色さんだって今そう言った。


「色さんの恋人になるってことですか?」

「そうだよ〜」

「でも、俺!色さんのことは大好きだけど………こっ恋人には……その……俺はれっ恋愛感情はたぶん色さんには無くって。色さんは俺の憧れでっ……だからっいい加減に色さんのこっ恋人には……なれないです!」


傍に居たい。でも、恋愛感情じゃない……ハズなんだ。俺みたいのが、色さんの恋人だなんて。それに、色さんにはいつだって可愛らしい恋人がいたんだ。

………色さんがわからない。

俺は、どうしたら色さんをガッカリさせないようにできるんだろう。


はい、と言えばいいのか。
大好きな色さんに思ってもない返事をするの?

色さんは俺のことどう思ってるの?

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あきゅろす。
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