「どうした」
いきなり黙ってしまった俺のことを心配したのだろう。エースが前を見たまま、聞いてきた。
首を横に振り、何でもない、と答える。
「見えたな」
エースが言った通り、目の前に小さな島が見え始めた。船は停泊してないところを見ると、海賊はいないようだ。
少し安心した自分がいたのは秘密だ。
船を手慣れた手つきで止めるエースを眺める。
「取りあえず、飯屋だな」
「はいはい」
「そういえば、金やるから、服でも買いに行くか」
「え?」
エースは俺の服を見ながら、腰に手を当てて言った。
「それじゃあ目立つだろ」
「エースに言われたくないけどな」
まあ、エースの言ったことは間違いではない。制服姿はかなり目立つ。
ちなみに俺の高校は私服高だが、制服の形をした服が一番自分的に楽なうえ、兄貴の制服があったのでそれを着る方が金の節約になるのだ。
だから、男物の制服姿なのだが。
「こっちには制服とか、ないのか」
「海軍ならあるけどな」
歩き出したエースを追いかけながら聞けば、そう答えるエースにそういえば何て思う。
この世界には、多分学校がない。あっても、エースの住んでいた町にはなかったんだ。
フウシャ村だったか……
「取りあえず、腹が減ったな」
「あ、あの服良い!」
そう言った二人は、互いに違う道を歩いていってしまった。
「あいつ、どこ行ったんだ?」
ところ変わって飯屋。エースがネオがいないのに気がついたのは食事中であった。
いつものペースで食べたのだろう。周りには山積みになっている皿が数えきれないほどある。
周りはエースの食欲に圧倒されている。ギャラリーが出来るほどだ。
エースは大きな溜め息を吐くが、その手は未だに止まらない。
「ったく、探しに行かねえと」
がたっと、肉を片手に立ち上がり、出ていこうとするが手を掴まれ、動けなくなる。
振り返れば、そこには店の店主が。
「お客さん、お金」
「ああ、わりいな」
口角を吊り上げ、帽子を深く被り直し、俺は海賊だ、と言えばその手は振り払われ、食い逃げが行われた。
店主の食い逃げだあ! という叫び声にエースは走るスピードを上げた。
確か、あいつは俺と服を買う予定だったんだ。ってことはどっかの服屋か……
服屋つっても、たくさんあるしな……
あいつの趣味何か分かるわけがねえし。
走りながら普段あまり使わない頭をフル回転させる。
「とりあえず、適当に回るか」
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