SS
2008-04-06(日)
魔法
「斗亜先輩っ!」
「あ、沙梨衣ちゃん」
家を出ると、可愛い後輩が私を待っていて、笑顔で出迎えてくれる。それがもう、1年続いている。でも、私たちは先輩と後輩の関係のまま。当たり前って言ったら、当たり前なんだろうけど。
「おはようございます、斗亜先輩」
「おはよう、沙梨衣ちゃん」
どこかの魔女っ子の様な名前を口にする度、私はくすぐったいような、恥ずかしいような気持ちになる。
隣を歩いているこの後輩は、私の想いに気付いているだろうか。
じっと沙梨衣ちゃんを見つめてみる。
「…どうしたんですか、斗亜先輩‥?」
「可愛いよ、沙梨衣ちゃん」
「頭打ったんですか…?」
不思議そうに私を見る沙梨衣ちゃん。可愛いって褒めたのに。
「頭打ってないよぉ」
「今日の斗亜先輩‥恐いです」
「恐いって何だよー」
「だって…ずっとあたしの顔見てるし、可愛いとか‥恐いです」
どうやら、私の想いは届いていないようだ。うーん、やっぱり。まだまだ時間が必要かな。
「沙梨衣ちゃん、魔法見せてよ」
「斗亜先輩、あたしをいじめたいんですか?」
「え、まさか!私は純粋に沙梨衣ちゃんの魔法が見たいだけだよ」
「あたしは魔法なんて使えません…」
「魔法の国からやって来たんじゃないの?」
「生まれも育ちも日本です‥」
「隠さなくてもいいじゃんかー!魔法使っちゃいなよ!」
「隠してませんよー‥」
しばらくはこんなくだらないやり取りが続くんだろう。ある日突然、くだらないやり取りの中に「好き」って言葉を混ぜたら、何て反応するかなぁ。「斗亜先輩、あたしをからかってるんですか?」なんて、冷ややかな目で見られるのだろうか。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
クサイ台詞かもしれないけれど。
「私は君の魔法に魅せられたんだ。」
[*最近][過去#]
[戻る]
無料HPエムペ!