SS 2008-04-04(金) 嘘だなんて。 「桃ー!」 「あ、梅ちゃん!」 横断歩道の向こう側からちぎれんばかりに手を振る梅ちゃん。周りの人が何事かと私たちをジロジロ見てるけど、関係ない。 「あのねっ、昨日ね、家に帰る途中に宇宙人と会ったよ!」 こっち側に渡ってくるやいなや、いきなり意味不明なことを言い出す梅ちゃん。周りの人は「何だコイツら」みたいな顔をしているけれど、私たちには関係ない。…いや、ちょっと恥ずかしい。 「梅ちゃん」 「ん?」 「嘘つくの下手くそだね」 「えっ…!なんでバレたの!?」 今日はエイプリルフール。だから、嘘をついて私を驚かそうとしてるみたい。 「バレたっていうか…まぁね‥」 「桃は凄いなぁ!あたしの嘘を見破るなんて…さすが、あたしの恋人だ」 納得したように「うんうん」と頷く梅ちゃんは、純粋過ぎて少し眩しく感じる。 「梅ちゃん、私ね‥」 「何ー?」 お返しに、私も嘘をついてやろう。 「梅ちゃんのこと、大好き」 「えっ…!私も、」 「嘘だよっ!今日はエイプリルフールだもんねー」 すかさず満面の笑みでこう言ってやると、梅ちゃんの目が大きく見開かれた。 「えっ…?」 梅ちゃんの目にじわじわと涙がたまっていく。 まさか泣くとは思ってなかったなぁ。しょうがない、もうエイプリルフールなんてやめよう。 「嘘だなんて、嘘だよ」 「え?」 きょとんとする梅ちゃんに、私は本当のことを言う。 「私は、梅ちゃんのこと大好きだよ」 「それ…、本当?また嘘じゃないの?」 梅ちゃんは、人間不信になった。 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ 今日は何を言っても信じてもらえない。 明日になったら信じてもらえるだろうか。 [*最近][過去#] [戻る] |