**140文字・他**
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※CP表記の無い物は、ほぼ土銀か高銀
2017-12-14(木)
坂田銀時の消失<3> 〜未完
◇
ああ、畜生!
どうなってんだよ、今の状況は?
まわれ右をして顎に手を添え暫し土方くんの背中を見詰める。
「ど、何処に行きやがった、万事屋!」
直ぐ真後ろに俺が居るというのに、土方くんは落ち着きなくきょろきょろと辺りを見回し、「万事屋!」「何処だ!?」と声を荒げていた。
俺、ここに居るんですけど?
「ふ、ふざけてないで出てきやがれ!」
別にふざけてるつもりは微塵もねえんだって。
「おい! で、出てこい! 冗談はいい加減にしろ! 驚かせようったって、そ、そそ、そうはいかねえぞ!」
驚いてんのはこっちの方だよ!
つーか、そんなビビんなくても……。
足元に視線を落とせば何故かブーツが透けていた。いや、ブーツだけじゃない。
顔の前に持って来た両掌も、身体も着物も腰に差した洞爺湖まで、
「見事に俺自身と、身に着けていた物が全部透けて見える……」
何かクリオネみてえだな、と袂をパタパタさせつつ、少し冷静になって辺りを見回してあることに気付く。
ビルの影、電柱の影それにションベン引っかけてる犬の影、そして土方くんの影はあるのに俺の影だけがない。
やっぱ、これって、
「俺は消えちまった……、ってことか?」
そりゃ、目の前で突然、人が透明化したらビビるわな。
驚かせてごめんね土方くん。
でも、何でだ? どうしちまったの? 何が起こってんの?
「おーい、ひーじかーたくーん」
声に出して呼んでみたところで目と鼻の先に立つ男は俺に気付かない。
「マジ聞こえねえのかよ……」
そうこうしているうちに副長さんはジャケットのポケットから携帯を取り出し震える指先で画面に触れた。
誰かに連絡するのだろう。
近付いて肩越しに覗き込むと、山崎、という名前が目に入る。
ああ、ジミーね。
でも、ちょっと待て。
ざっと簡単に今起こった出来事を頭の中で浚ってみると、これは確実にあの沖田くんから貰ったドリームタブレットが関係しているに違いない。いや、それ以外に考えられない。
流通不可のご禁制物って言ってたよな。
しかも、押収品。
俺が吹聴しなければ大丈夫……、ってことは、つまりこのことが誰かにバレて大騒ぎにでもなれば俺のせい?
……もしかしなくても俺、沖田くんに恨まれるんじゃね?
縛られる? 吊るされる? 鞭で打たれる?
NO!
ダメ、ゼッタイ!
「ちょっ、土方くん! 多分これ三時間程度で元に戻るはずなんだよ。だから、あまり大ごとにはしたくねえんだけど……」
咄嗟に伸ばした手で黒い隊服に包まれた左手首を掴む。―――と、弾かれたかのように土方くんは携帯を地面に落とした。
……あれ?
喉の奥で、ヒッ、という悲鳴を噛み殺し土方くんが素早く振り返る。
「……よ、よろ、ずや?」
それと、同時に俺の手の中から土方くんの腕がするりと離れた。
え?
何これ?
俺からは土方くんに触れることが出来た。
しかし、土方くんからは俺に触れることが出来ない?
行き場を失った自分の手をぼんやりと眺め、どういうことだと思案していると、
「そこに……、居るのか、万事屋……?」
鼻の先わずか数センチまで苦み走った土方くんの顔が迫っていた。
うわっ、ぶつかる。
思わず一歩下がり目をつぶろうとした瞬間、再び土方くんは俺の身体を通り抜けていた。
やはりそうだ。
思った通り。
俺の方から触れようと思えば触れることが出来る。
だが土方くん、……だけじゃねえな、こりゃ。きっと、他者が俺を見ることも触れることも出来ないに違いない。
ついでに声も届かねえ……、か。
ほとほと参った。
どうしたらいいんだ?
と、天を仰いだところで足元に転がった携帯から、
「副長? どうしました副長……? 何かあったんですか!? 副長?」
忙しなく土方くんを呼ぶジミーの声が聞こえて来た。
こりゃまずい。
ハッと我に返った土方くんの手が携帯に伸びる。
あー、もうグダグダ考えても分かんねえ。
儘よ!
土方くんってかなり丈夫だったねー、ごめんねーっ!
俺は土方くんの手が携帯に触れるか触れないかのところで、漆黒の艶やかな直毛に覆われた後頭部めがけ、腰から洞爺湖を引き抜くと手加減を加えながらそれを一直線に振り下ろした。
→つづく
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