**140文字・他**
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※CP表記の無い物は、ほぼ土銀か高銀
2017-12-09(土)
坂田銀時の消失<1> 〜未完〜
* * *
普通、そんなの誰が考えたって、『マヨネーズ』だと思うじゃねえか!
* * *
往来のど真ん中―――。
目と鼻の先で、つい今の今まで罵り合っていた男は咄嗟に前方へと向かって手を伸ばすとその鋭利な瞳をたちどころに大きく見開いて、
「よ、万事屋……?」
と、糸より細い声で俺を呼んだ。
武装警察真選組で『鬼』と謳われる副長、土方十四郎のこれほどまでに肝をつぶした様子なんて、なかなかお目にかかれるもんじゃねえ。
顔面蒼白。
突然声を詰まらせた土方くんは、ムカツクほど整ったその顔に誰の目にも見て取れるだろう深い焦りを滲ませ、はなはだ驚いた顔をして呆然と俺を凝視する。
「おいおいおい。どーしちゃったのよ、副長さん?」
まるで時間が止まったかのような? それとも写し取られた写真の一コマのような?
相手の男はピタリと動きを止め、微動だにしない。いや、唯一、伸ばした手の指先が明らかに白み、カタカタと小刻みに震えていた。
「ちょっとちょっとぉー。アクション、オーバー過ぎるんじゃね?」
常日頃、顔を合わせれば恒例になっている口喧嘩の最中、俺の発した大人気ないたった一言でそこまで動揺する?
「何だよ、何だよ? どーしちゃったの? おめえ、そんなにマヨネーズが消えちまったら困るのかよ?」
俺は自分でも分かるほどに相手を小馬鹿にしたような顔をして、ぷっ、と噴き出し肩を窄めくすくすとせせら笑った。
いつもならば、ここで、
「何笑ってやがる! この万年金欠、くそ天パが!」
と、怒髪天を衝かんばかりの剣幕で、一発、怒鳴り声を轟かせるはずの土方くんが、まるで貝にでもなってしまったかのように無言のまま。
……え?
何なのほんとに?
はー、呆れた。
「やれやれ。おめえさん、心底マヨネーズに命かけてんのね?」
しかし、そこまでびびるようなことですか?
高々俺が、
てめえの一番大好きなモン、この世から消えて無くなっちまえーー!
って言ったぐれえで。
「全くぅ」
大げさだねー、ほんと。
「おめえ、そんなんで真選組の幹部、勤まってんの? 江戸の治安、守れんの?」
ちっちっ、と、自分の顔の前で立てた人差し指を左右へメトロノームのように振り振りしてみても土方くんの反応は薄く……、
と、言うよりも反応は皆無で、漸く俺はこの辺りまで来て、あれれ? と、違和感を感じたその時、
「よ、万事屋っ!!」
悲痛な声で叫んだ土方くんが一歩前に足を踏み出したと同時に踏鞴を踏んで、目下、俺が居る場所を文字通り素通りし―――、
顔だけで振り向くと、いつの間にか土方くんは俺の背中の直ぐうしろに立っていた。
……え?
ちょっ……、
あれ……?
「おめえさん、今、俺の身体、すり抜けなかった?」
→つづく
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