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ごめん、それでも、すきなんだ


♯1〜43「日常編」
♯44〜「過去編(ヤス視点)」
♯66〜「距離編(秀介視点)」
♯87〜「閑話休題(孝臣視点)」
♯91〜「終末編(和臣視点)」

◆◇◆SBI完結◆◇◆
ご愛読ありがとうございました!
2011-12-05(月)
永久指名


 一見何気ないドアを開ければ、そこはホストクラブ。薄暗い照明に、なんかよくわかんねーシャンパンが飾ってある。
 低音が響くBGMの中に入ると、ベルが置いてある。迷わずに叩くと、チンっと甲高い音が店内を切り裂いた。

「いらっしゃ、……」

 そういう係りなんだろう。スーツ着た黒髪の、あんまりホストっぽくない人が吹っ飛んできた。そんでオレの顔見て固まった。

「あのー、」
「はい?」
「男の方、ですよね?」
「そうっすけど?」
「えーっと、罰ゲームとかですか?」
「いや、違います。つーかあのー、初回なんすけど、指名ってできます?」
「えぇっ!?」
「しゅーのこと、呼んでもらえます?」
「しゅー?」
「No2のやつ」
「ヒデ、っすか。いや、あの、お兄さん? ヒデがお兄さんのオンナとか取っちゃいましたか?」
「は?」
「報復とか、暴力はちょっと……」

 心底困ってんだろーな。眉毛がハの字になってる。かわいそーに。とは思うけど。

「あ、じゃあ別に男の入店お断りとかじゃないんすね。とりあえず席案内してもらえます? 面倒ゴト嫌だったらさ、しゅーにぃに、てめえのカオちゃんが来てやったぞって伝えてよ」
「っ、ちょっと!」

 案内係のお兄さんを置いて、先に店に入ると、いらっしゃいませ!って言いかけて固まるやつがいっぱいいた。笑える。

「と、とりあえずこちらへ!」

 背後から腕を取られて引っ張られて、座るように促されたのは店の奥のはじっこの席だった。

「すぐにヒデ呼ぶんで!」

 座り心地のいいソファに浅く腰掛けて足組んだオレに、案内してくれたお兄さんが慌てて店に走り出してった。その直後だ。

「ちょっ、ヒデ!?」

 ってゆーオンナの声がきこえて、ふと顔をあげたら、バカが心底驚いた顔してオレを見てた。

「カ、オ……?」
「よう」

 にやりと笑って答えてやった、次の瞬間、

「っ!」
「カオ、カオ……!」

 思いっきり抱きついて来たしゅーにぃの勢いを殺せずに、オレたちはソファに寝っ転がっていた。つーか押し倒されてた。

「ちょ、しゅーにぃ?」
「!」

 重くて、そんで若干うざくて、肩をタップして名前を呼べば、オレを囲う腕に力がこもった。いてーよ。

「カオ……」

 それでも、耳に届く声が気持ち良くて。思わず肩を叩いていた手を背中に回してしまった。
 ダメだな。どうしても諦められない。死にそうだった。しゅーにぃに会えないってだけで、ほんとに。
 会いたかったんだ。オレは、しゅーにぃに。



#95「永久指名」
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