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ごめん、それでも、すきなんだ


♯1〜43「日常編」
♯44〜「過去編(ヤス視点)」
♯66〜「距離編(秀介視点)」
♯87〜「閑話休題(孝臣視点)」
♯91〜「終末編(和臣視点)」

◆◇◆SBI完結◆◇◆
ご愛読ありがとうございました!
2011-11-28(月)
面倒すぎる


「おせーよ!」
「悪い」

 少しでも冷静になるために、酒は抜いておきたかった。少し洒落たカフェに呼び出したヤスは、スーツ姿でストローをくわえてオレをやじる。
 本当に、こいつに惚れていなければこんな苦労はしなかったのに。神様がいるなら本気で呪ってやりたい。

「タカ?」
「……まずいことになってる」
「なにが? あ、おねーさん、オーダーいっすか?」

 イスを引いたオレに首をかしげながら、ヤスは勝手にアイスコーヒーを注文してくれた。ありがとうとでも言えばいいだろうか。

「なんだよ、まずいことって? 会社の金でも着服したか?」
「する訳がないだろう」
「じゃーなんだよ」
「お前の弟の話だ」
「は?秀がなんか迷惑かけたの?」
「自体は複雑かつ、悪いのはあのバカだけだ」
「まじか。なんか悪いな」

 アイスコーヒーです、と運ばれてきた黒い液体を一口飲むと、少し頭がはっきりしてきた。
 ヤスを傷つけるなんていうのはオレにとっては論外だ。その行為をすることになるとは。心が痛む。

「そもそもの発端は、秀介が和臣をセフレにしたことだ」
「はぁ!!??」

 ガタンと立ち上がったヤスは顔面蒼白だった。
 周りの目を気にするように目配せすると大人しく席に座り、吹っ飛んできたウェイトレスを手で制す。そうだ、冷静になってくれ。

「おい、なんだよそれ……!」
「いや、これは発端であってお前に直接の影響はない」
「んなわけねーだろ!オレにとっても和臣は弟みたいなもんなんだぞ!」
「そうだな。オレも、バカよりは実弟のほうが大切だからな。あのバカから和臣を引き離した」
「いいぞよくやった!」
「そうしたらあのバカ、悪い方にキレてな。お前の弟から伝言だ。……サクラはまだお前のことを忘れてない。自分がヤスと兄弟だとバラした、ってな」

 ヤスは目を丸々に見開いて、その後机に突っ伏した。ああ、イライラしている。キレてるな。

「ヤス」
「殺す」
「やめとけ。あいつはお前が手を汚すには相応しくない相手だ」
「殺してやる、あのクズ……」
「だから、やめておけ。本気で殺す気ならオレにやらせろ」

 突っ伏したまま何か唸っていたヤスは、それからしばらくして顔をあげた。

「話はそれだけ?」
「ああ」
「わかった。迷惑かけたな」
「ヤス!」

 伝票を持って席を立ったヤスに慌てて声をかけた。ひどい顔をしている。

「大丈夫だよ。本気であのバカ殺す時は声かけるし。……ちょっと、オレのことは放っといてくれ」

 じゃーな、と手を上げて店をあとにしたヤスに、ため息が止まらなかった。本当に、面倒なことになった。


#88「面倒すぎる」
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