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ごめん、それでも、すきなんだ


♯1〜43「日常編」
♯44〜「過去編(ヤス視点)」
♯66〜「距離編(秀介視点)」
♯87〜「閑話休題(孝臣視点)」
♯91〜「終末編(和臣視点)」

◆◇◆SBI完結◆◇◆
ご愛読ありがとうございました!
2011-11-27(日)
迷惑こうむる(閑話休題)


「ぁー……」

 ガリガリと頭を掻きむしっても、なんにも浮かばない。オレは一体なんなんだ。なんであの兄弟はああなんだ?

「岩沢さん? どうかしたんですか?」
「え?ああ、まぁ、プライベートでちょっとね」
「彼女さんですか?」
「はは」

 就業中の社内でそんなことを考えてたら、妙に馴れ馴れしい後輩に声をかけられてしまった。面倒だ。

「えー、でも岩沢さんの彼女さんとか、すごいデキるオンナなんだろーなぁ。何があったんですか?私でよかったら相談」
「ごめんね」

 こうやって話しかけられて不愉快にさせてることにも気づかないバカ女に、一体何を相談しろというんだ。むしろ今回の一件は女が一人も登場しない男臭いものなのに。


 数ヶ月前、ばったり街で会った和臣。目が合って手を上げて合図したら目を見開いたあと嫌な笑い方をした。
 苦しいのに無理に笑って、だけど辛くて耐えきれないと訴える顔だ。問いつめればあのバカがバカなことをしているし。
 散々話し合って、結局少し距離を取らせることに成功した。

 ……と、思っていたのに。

 あのバカから電話がきて、出れば喧騒を背景に楽しそうに教えてくれた。

『なぁタカにぃ、知ってた? やっぱさ、好きなやつと突然会えなくなるとしんどいらしーよ』
「……だから?」
『オレはまじでカオのことすきなのに』
「好きだったらちゃんと対等に扱え。セフレにするな」
『んなことしてねーよ!』
「どんなつもりかは知らないが、お前がやっていたのはそういうことだ」
『……あっそ。まぁいいや。あ、タカにぃ、ヤスに伝言頼んでいい?』
「伝言?」
『そ。サクラさんはヤスのこと全然忘れてねーよって』
「……お前、なにした?」
『オレがヤスと兄弟なのバラしただけ。じゃ、早くカオのこと返してね』

 ヒデと呼ぶ女の声に応えながら、秀介は電話を切った。本当に最悪だ。
 何故あの兄弟は自己中心的にしか生きられないのだろうか。惚れてなかったらとっととヤスのことも放り出していただろうな。

「はぁ……」

 終業後にヤスを呼び出した。ああ、なんて憂鬱なんだろう。



#87「迷惑こうむる」

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