ごめん、それでも、すきなんだ
♯1〜43「日常編」
♯44〜「過去編(ヤス視点)」
♯66〜「距離編(秀介視点)」
♯87〜「閑話休題(孝臣視点)」
♯91〜「終末編(和臣視点)」
◆◇◆SBI完結◆◇◆
ご愛読ありがとうございました!
2011-11-24(木)
距離
あの日から、オレは自分でもびっくりするくらいのクズの落ちぶれた。クズなんてもんじゃない。ゴミだな。
「……また、かよ」
「うるせーな」
オレとカオとの間で決められた、暗黙のルール。ぴんぽん三回。
「んっ……」
嫌そうな顔して現れても、見ないふりをする。ドアをカギを後ろ手にしめながら、もう片方の手でカオを引き寄せた。
眉間に深いシワ刻んでるカオに舌ねじこんで攻め立てる。オレもカオも人よりはオンナと絡んで来たから、テクも人よりは、ね。
深い眉間のしわがやんわり解かれて体から力抜けたら、そっこーでベッドに連れ込む。服脱がして、これだけは頼むと言われたから、ローション使って後ろをほぐしてやる。
鼻にかかる声出すカオに、あんなに勃ちが悪かった息子がビンビンだ。ほんと、クズ。むしろゴミみたいな息子だよ、おう。
「ぅあっ、あ、んンッ」
あの日。オレに向かってあんな顔をしたカオを押し倒して朝っぱらからサカった。
オレがカオに向けてる好きは、カノジョに向けるよーなもんじゃない。そんなクソくだらない、ぜってーいずれ壊れるような柔いもんじゃねー。
それをおんなじに思われるのがここまで嫌だとは思わなかった。
血がのぼったなんて、言い訳だけど。もし血がのぼったんなら、それは今も落ちて来てない。カオを抱いて、その奥に出すと一瞬熱が冷める。たった一瞬だけど。
「ッ!!」
「ぅ……は、」
オレの腕に、背中に爪を立てて最後の声を我慢するカオに、征服欲が満たされる。ほんと、さいてーだ。でも出したから、オレは今、一瞬の賢者だ。
なにしてんだよ、カオだぞ! 弟みたいで、だいじで、すげー大切なヤツをまたヤッたのか!
賢者なオレはオレを責め立てるけど。ハァハァと乱れた息の中でしか、賢者は存在してくれない。
オレは先にシャワーを浴びて、カオがシャワーから戻る前にこの部屋を出る。そんできっとまたこの部屋に来る。
カオを抱くことでしか、もうオレはカオと繋がっていられなかった。だけど、前はそばにいなくても近くに感じたカオは、もういない。
奥深くまでつっこんでも、キスして抱きしめても、カオは遠くて、遠くて……遠かった。
#84「距離」
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