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ごめん、それでも、すきなんだ


♯1〜43「日常編」
♯44〜「過去編(ヤス視点)」
♯66〜「距離編(秀介視点)」
♯87〜「閑話休題(孝臣視点)」
♯91〜「終末編(和臣視点)」

◆◇◆SBI完結◆◇◆
ご愛読ありがとうございました!
2011-11-23(水)
もう戻れない

「あがっていー?」
「え、あ、」
「なに?あのバカそうなオンナでもいるわけー?」
「や、てゆか、ちょ、」

 さっきからなに言ってんのかわかんねーカオを置き去りにして、部屋に勝手にあがってやる。あの日逃げ出したあの部屋は、あの日からちょっとモノが増えたみたいだ。
 見覚えがあるのに、なんだか違う。その違いにまるごと拒絶されてる気がして頭がまた痛んだ。

「なに、してんの」
「んー……頭痛いよーカオー」
「そーじゃねーだろ。なにしてんだよ、……秀さん」

 あまりに頭が痛いもんだから、カオのベッドで寝てしまおうと足を乗せたとこで。そんな。まさか。

「……なんだよ、それ」
「オレのセリフだ。あんた、いまさらなにしに来たんだよ?」
「カオ?」
「悪いけど、オレは……」

 なんだよ、オイ?
 空いた距離は、埋めようと努力しりゃ埋まるんじゃなかったのか? それともこんな風に目の前に深い穴があっても乗り越える努力を見せろってことかよ?

「お前さ、あの女、カノジョ?」
「……なんで」
「やめとけよ。あんな気遣いもできねーよーなバカオンナ。お前には合わねーよ」
「それこそ今更じゃね? あんたに当てがわれた女なんてどれもあんなんだったけど」
「はは、そっか……」

 笑えねー。あんた、だとよ。つうかなにより、秀さんって。どんだけお前、オレと距離あけるつもりだ。
 ギリっと歯ぎしりをしてしまった。我ながら心が狭いな。

「もとには戻る気ないって?」
「……戻れるわけ、ねーだろ」
「……そうか」
「……ごめん」

 いーよ、仕方ない。なんて言える身分なわけがなかった。
 心地よかったあの関係をぶち壊したのはオレだ。オレが悪い。大切なものを大切にできなかった、オレが悪いんだから。

「カオさぁ」
「なに?」
「オレのこと、もう好きじゃない?」
「……は、なに、……っつうか、あんたは?」
「オレ?」
「あんたは、オレのこと好きなわけ?」

 なんて茶番だろう。と、思った。答えなんてひとつしかないのに。

「すきだよ」

 間髪いれずにそう答えると、カオは斜め下を向いてすげえ嫌そうに笑った。見たことのない、顔だった。

「それってさ、オレのことヤっちゃうくらい?」


 頭に血が上る。吐くかと思った。こんな顔させて、こんなこと言わせて。そんで悟った。



#83「もう戻れない」
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