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日記  
主には萌え語り・返信にて使用予定。たまに日常とか小噺とか。
2009-10-19(月)
言霊論議(小噺)

 

 言葉を用いり始めたのが人であるならば、あらゆる事象を指して、それを意味する"名"を付けたのもまた人である。
 先人が何を思って多種の点と線を繋ぎ合わせた文字を生み出したかなど、言語の概念が当然の如く定着した今となっては知る由もなければ、知る必要もないことだ。
 物事の起源を細かく考え始めれば、それこそ原初を突き詰めなければならなくなる。それは本末転倒だ。
 つまり何を問題提起としたいのかと言えば、先人は如何な定義を以て物事に名を付けたのか、である。
 言葉とは、基本となる50音の組み合わせによってその響きが生み出され、個々の意味を添付されて存在する。また其処には音が同じであっても発音一つ、宛がわれる字一つで意味を違える複雑な系図を有しており、時という経過に伴って枝分かれした道先から更に分岐という不規則な変化を生じることがある。
 それはつまり、言の葉を用いて定義すべき事柄が日々増殖している、ということではないのか。或いはより細かく物事を区別するようになったか。何れにせよ、この世の事象は言の葉などという画一的なもので表しきれるような容易なものとは思えない。
 とはいえ、全を的確に定義することは不可能ではあるも曖昧な型に嵌めた上で、人はそれを苦もなく当然の如く扱っているのが今日の現状だ。
 何しろ人間は適応力に優れている。辻褄が合えば理屈は二の次にされることも珍しくはない。つまりこういった思考は単に、深く考えすぎなのだと言われてしまえばそれまでの話、なのだ──

「──しかし、曖昧な箇所を疑問視し、明確な型に嵌めようとする者も存在する。また従来の言葉を己にとってより身近な言葉として扱おうとする者も。そういった者達の、つまり人間の心によって言葉は更に分岐していく。そも、心というもの自体が時と共に如何様にも移ろうもの。そこに絶対の法則性が生じるとは思えぬ、ならば一般に定義され、名付けられる感情は実に曖昧で、信憑性がないのではないか?」

 疑問形で問われたところで残念ながら薬売りは、ある意味無垢故の、男の問い掛けに対する答えを持ち合わせていなかった。
 元を辿れば人間に属す存在であった男は紆余曲折あって今やアヤカシに近い身となり、その心は情緒を欠落させ、或いは忘却の彼方に追いやってしまっている。
 人が時と共に当たり前のように自らの中へ受け入れていく事柄の一部を、つい最近まで認知していなかった故に、当たり前に受け止めることが出来ない。
 とはいえ、質問の内容は実に的を射ており、聞くものが聞けば成程確かに疑問に思わずにはいられぬだろう。もっとも、多くは考えても仕方ないことだと、受け流してしまうものだ。それは、単に興味を示せないだけが要因ではなく、突き詰めれば幾らでも理由が生まれてくる。

「疑問視する者は数知れず…されど、私達はそれを敢えて問うことなく日々を過ごす。何故か…それは言葉そのものの存在意義を疑うもの。曖昧であることを人は皆理解した上で、しかし失うことも許せずに甘受することしか出来ず…。言葉無くも、生きることは可能。しかし私達は既にそれを知り、利便性を理解した。人は言葉を用いて他者の心により触れやすくなった、より相手を身近に感じとり、愛しいと思うもの、疎ましいと感じるもの、千差万別。突き詰めれば言の葉とは所詮事象の表面を示すばかりの張りぼて、だが、失えば私達は混迷する…。果たして皆、疑問に思わぬのか。疑問視しながら見ぬふりをしているだけなのでは…、己ですら気づかぬ内に…」

 即ち、混乱を恐れるあまりの盲。
 それを愚かだと称しようにも、そもこの世に明確な定義を以て測れるものがどれほど存在するのだろうか。
 絶対なるものなどないだろう。不確定要素がこの世にあまねく存在するものならば、この世の事象とはかくも曖昧なるもの。
 曖昧であるが故に、心は複雑にして未知。予測などつかず、それ故に一概には推し量れぬもの。モノノ怪へと転ずる人の情念こそ正にそうであろう。
 だからこそ、だ。人の心に定義を生み出すことなど到底不可能ではあるものの、人は未知なるもの異質なるものを拒む故に曖昧であっても推し量る術を見つけようとするのだろう。さながらそれは、暗闇の中に光明を見出だすように、疎ましきものからの逃げ道を作り出すように。

「…良いのですよ、曖昧で。狡猾で、愚純であろうとも、それらを含めて、人間なのですから…」

 それに、ね──

「曖昧であろうとも、言葉がなければ私達は、こうして、互いの想いを伝えることも出来ない、じゃあ…ないですか。お前の声も、ろくに聞けやしない。そんなのは、勘弁したいですよ。確かに、この想いを伝えるには八百万の言霊を用いても、明確とは言えやしないでしょうが、ね。良いではありませんか、私達には時の概念など微々たるものなのですから、伝えきれぬからと焦ることもありますまい…」
「……」
「実に遠回りな問題提起ですが…つまりは、欲しかったのでしょう?愛しいと、好いていると、その程度の言葉では到底足りぬ、思慕を定義する言葉が」

 一を知ろうとして百を求めた愛しい人。
 確信を込めて問い掛ければ、男は暫し逡巡した後、正直に首を縦に振った──





言霊論議
(無駄ではない、貴方と語るは全て有意義)





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何か哲学的な展開をしたくて、意味不明に撃沈したもの。哲学というより単なる屁理屈。
平仮名の起源は平安時代でしたか。漢字は伝来したものですが、そもそも何がどうなって文字が生まれたのやら、突き詰めたらキリがない。調べればこの辺りはあっさり出てくるのかもしれませんが、まぁ一般論として、知らなくても良い、んですよね。

こういう討論を経て、剣さんは理屈抜きで薬売りが好きという結論に達するんでしょう。薬売りさんは既に理屈抜きですが。

…で、何が書きたかったんだ?(推敲はどこいった←)
 
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