Diary
2013-03-04(月)
J庭34お疲れさまでした!
スペースにいらっしゃって下さった方、また通販等でお手に取ってくださる方にも本当に感謝しかありません。ありがとうございます!!
今回はひなまつりの特別企画として、ペーパーラリーがあったのですが、以下それに参加した際に書いたリアブレのSSSです。特に落ちもない話なので、日記に載せておきます。石の意味が話の中でできなかったので、大人しくタイトルでネタバレさせてみました(笑)
***
恋愛に対する積極性を持たせてくれる石の話。
マシマ総合学院の母体であるmashima-offic。
その会社がテストを兼ねて、在学生にプレイさせているオンラインゲームが、real blade(リアルブレード)通称、リアブレだ。
学生一人一人のリアルの成績がキャラクターに色濃く反映されていて、キャラクターを強くしたければ、現実の学業を頑張る、部活動に励む等、現実世界での努力が必要になる。
そのゲーム内において、僕は二人のキャラとパーティを組んでいた。それがマコトとハクだ。
携帯電話を手にしてパソコンの前に戻ってきた僕を待っていたのは、マコトが心配そうに呼びかけるメッセージだった。
携帯を探すために突然離脱してしまったせいで、余計な気遣いをさせてしまったらしい。
慌ててキーボードに向かい、マコトに向けて返信する。
「ごめん、止まっちゃって。携帯を探してた」
「良かった。フユの反応が突然なくなっちゃったから、何かあったのかと思った」
僕のメッセージを受けて、マコトのアイコンが笑顔に変わる。
「心配かけてごめん」
元々僕はパソコンに不慣れで、タイピングが遅い。コメントを入力するのに数分かかることなんてしょっちゅうある。
それでも、マコトとハクは僕のメッセージが打ち込まれるまで待っていてくれる。
今日はそれを考慮しても遅すぎたのか、余計な心配をかけさせたみたいだ。
「探すってなんだよ」
打ち込んですぐに、一緒にいたハクからのメッセージが飛び込む。
「バッグのどこに入っていたのか、わからなくなっちゃって」
スクールバッグの容量が大きいせいか、バッグ内ですぐに行方不明になる。多分部活で使う着替えなんかも適当に詰め込まれているせいかもしれないけど、バッグの中はいつも乱雑になっていて、携帯は大体底に沈んでいる。
「それなら、大きめのストラップとか付けると見つけやすくなっていいと思うよ」
確かに見つけやすい何かをストラップとして付ければ、見失うことはないかもしれない。
「俺、少し大きめのいいストラップ持ってるよ。フユさえ良かったらあげようか」
「貰うのは、悪いよ」
それは本心だ。
そして、もうひとつ。
現実で持っているなら、会わないといけない。それはできない。マコトとハクは度々僕に会いたいと言ってくれる。だけど、僕はそれを拒絶し続けている。それを不満に感じているのは知っているけど、どうしても二人とリアルで会うことはできなかった。
「そっか。それならこことかどうかな」
メッセージウィンドウに自動リンクが貼られたURLが飛びこむ。クリックしてサイトに飛ぶと、電化量販店のストラップページだった。
マコトが紹介してくれたストラップは、革製品のシンプルなデザインのものだ。ネックストラップも兼用できるとあって、長さが自由に調整できるようだった。ただ、革製品だからか、高い。
僕の小遣いの大半を使ってしまう金額だ。
「それか、こういうのも可愛いんじゃないかな」
続いて紹介された先は、天然石を使ったストラップだ。
カーネリアンとローズクォーツと書かれたストラップは、赤とピンクの石が交互に編み込まれて作られている。
こっちのストラップの金額も良い値段だ。値段も手が出せない金額だけど、紐で編み込まれたストラップはすぐ壊してしまいそうなのが気になる。
教えてくれたマコトには悪いけれど、どちらも僕には合いそうになかった。
どうやって断ろうと思っていると、
「気持ち悪い」
僕よりも早く、ハクが反応した。
「気持ち悪いって、酷いなあ。ハク」
「自分でも自覚してんだろーが」
「でも、俺はそう願うから。ね、フユ、どうかな」
何が気持ち悪いんだろう。
天然石のストラップは女性的なデザインだけれど、綺麗な出来栄えだと思う。
「紹介してくれたのは嬉しいんだけど、やっぱり大丈夫かな。バッグの中で携帯を仕舞う位置を決めれば、見つからないことも減ると思うから」
スクールバッグのサイドポケットに入れるようにしたら、見つからなくなることは避けられる――気がする。
「お前の作戦は失敗したな」
「今、ハクの顔が想像できた。きっと悪い顔をしてるんだろうな」
「ハクの表情はアイコンの通りだろ? つーかお前よりマシだろーけどな。そう易々とフユもお前に騙されないってことだろ」
「騙されるって?」
「なんだ、気付いてなかったのか。ま、いいか。マコトが紹介したストラップをお前が買えば、リアルで見つけやすくなるってことだろ。それと」
ハクにしては妙な間が空く。
「そっちは解説する気にならない」
「なんだ、てっきりハクがフユに説明してくれるんだと思ってたのに」
「冗談じゃない。そこまでお前の思惑に乗ってたまるか。おい、フユ。お前が余計な時間を使ったせいで、プレイする時間が減った。今日はお前が死んでも、とっとと先進めるからな」
僕のせいで十数分の時間が経過していた。
現実世界の成績が反映されるこのリアブレで、僕のキャラはとても弱い。マコトやハクたちと行動すると高確率で死んでしまう。その度にマコトが回復させてくれてはいたけど、進行を重視するならそのまま進み、最後に蘇生させたほうが早い。
役に立てない、ゲームでの現実。
「またそんなこと言って。大丈夫だよ。俺が必ずフユの傍にいて、助けるから。俺の大事なフユをそのままになんてできないし。勿論一番は、死なないように守ることだけど」
どんなにマコトが強くても、ダメージひとつで死んでしまうフユを守るのは大変だ。
「だから、フユは俺の傍から離れてないで」
ネットを介していての会話で良かったと思う。
――どんな表情で、声音で、マコトが言っているのか知らなくてすむから。
マコトから寄せられる好意は、重く苦しい。マコトが望むものを僕は返せない。
せめて、強くなりたい。二人の足手まといにならないように。
死ぬことを前提にプレイするのは嫌だ。自分も戦って、クリアーを目指したい。
そうすれば、きっとこの胸の痛みも、罪悪感も、少しだけでも軽減すると、そう信じたかった。
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