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MURMUR
murmured somethings in hallucinations.

2013-08-08(木)
腐妄想は心の武器です。


観察+妄想は人間であれば誰でもするんでしょう。でもその答えに腐要素を入れたくなってしまう私は立派な腐人間なんでしょうね。まだ未熟者ですが真っ白な頃には戻れません。

以前関西で仕事をしに行った時のこと、初めてまじまじとゴキを見ました。想像通りの大きさでした。意外にどんくさくて真夏の炎天下の中カラッカラに干からびて死んでいたのをよくちりとりで拾っては捨てていました。生きているのを仕留めるのはできないので地元民を尊敬します。
あぁ、で、そこの職場がネタになりそうな人ばっかで楽しくて仕方が無かったんですよ、って話をしたかったんです。
何故か人相の悪い方が多く、しかしめっちゃ優しい人のようで、何か腹に一物ありそうな、いやでも顔で疑っちゃあいけんだろ、と思わせるような、いやでもこの顔見てみろよと言われると、うん確かにって言いたくなる、私も未だにどこまで関わって良いものか図りかねている人たちなのですが、一歩下がって眺めてるとすげぇ楽しいです。


飽くまでネタとして、別の人間として別設定で妄想するとこんな感じ↓になりました。(段々妄想が盛り上がって物語化したはいいものの、途中オチが分からなくなって長い間放置していたら、この元ネタの人がほとんど辞めてしまうという呪いが発生してしまいました。ちゃんとオチまで書き切ろうと着手しようにも、もはや今となってはどんな奴であったか思い出すのが難しいです。以前書き残していたネタを腕ならしの意味も込めて今書き起こしたものなので残念エンドで勘弁です)




THEエロオヤジって顔で目線が常に下がり気味の猫背な上司、高卒上がりの超世間知らずなピュアそうな童貞美少年に気を使って仕事帰りに食事に誘うが、めっちゃ警戒された顔で「結構です!」と予想外な程の断固拒否。がっくり肩を落としたところで美青年の部下が「まぁまぁ、数年の辛抱ですよ。僕もあなたの顔に慣れるまで年単位の時間が掛かりましたから」とフォロー。さらに俯いて丸くなる上司をお持ち帰りする元新人。誰もこの人の良さは分からなくていいよ、ってやつ。
常に視線が下がり気味なのはシャイだからなんでしょうが、胸元辺りに視線があるのはやっぱりよろしくないと思うんですよ、私。




今日も部下との交流に失敗してTheエオロヤジ上司が行くは、落ちついたレトロな雰囲気の豊富なカクテルメニューを取り揃える素敵バー。しかしそこに立つのはどこぞの組からまわされた楽しくなるお薬を売り捌く売人のような顔のバーテンダー。彼が嗤うと黄ばんだボロボロの歯が出てくるかと思いきや、元気な白い歯で爽やかに笑う。その笑顔が彼がまだアッパーグラウンドの住人だと教えてくれるのだ。

「恋ごころ」

と言う名のカクテル。これが名前の通り甘酸っぱくて美味い酒なのだ。

Theエオロヤジとヤ組の回し者が売春やら人身売買やら犯罪云々の話をしていそうな雰囲気をぶち破ったのは、ガゴーンッと勢い良くベルを鳴り響かせて空けたドアの間に立つ、見た目ジャイアNである。

「なんやー! 今日も失敗したんか、おっさん!」

「最近の子は酒も飲まないから難しいんだよ」

「何ゆうてん、おっさん! その顔見てみい、セクハラ顔に着いて来る方がおかしーやろっ! めっちゃ犯罪やで、それ!」

遠慮もくそもない。下半身ぼりぼり掻きながら唾を飛ばす下品者である。関西の方に偏見は全く無いが、彼の元ネタが印象的過ぎたのだ。ご勘弁願う。
見た目ジャイアNは「おら! 飲めやエロ魔王!」と言って彼の猛々しい名の酒をツケでTheエロオヤジにくれると窓の外に見えた巨乳美人を追っかけて騒がしく出て行った。

「まぁ、酒が入らなければ彼も良い奴なんだけどね」

無論、回し者の商売上、というわけではなく。

「ああ、やっぱりここにいましたか課長」

静かにスマートに入ってきた美青年。爽やかに仕事を終えてきたようだ。
一方、Theエロオヤジは既に出来上がっており、目の色は女を犯す寸前の大変危険な状態だ。目の曇った美青年はその姿に苦笑を漏らす。
Theエロオヤジの手にある「魔王」を一気に煽ると、懐から出した女性に貢がせたと思わせる高そうな財布から札を数枚カウンターに置き、Theエロオヤジの肩と腰を抱いて「ごちそうさま」と出て行った。
回し者はニヤリと嗤い、美青年とTheエロオヤジを見送った。彼も心根は優しいただのおっちゃんである為、美青年の手の動きに何ら疑問を抱くことは無かった。




昨晩の部下との失敗を反省すべく、一人Theエロオヤジはラーメン屋に来ている。
漂う匂いは濃厚。今にも涎を垂らし鼻を鳴らしそうなブタ予備軍がTheエロオヤジの隣でちんまり丸まって豚骨麺を待つ。近いうちにジューシーな具に変身することだろう。
カウンターの向こうにはキセルを咥え肩に蛇を背負っていそうな深い皺が刻まれた陰険そうな顔の婆が口をへの字にして菜箸を繊細巧みに操る。

「はい、お待ちどうさん」

ゼロ円スマイルは意外にも愛嬌がある。これで人を惑わして油断したところで食らうのだろうか、山姥なんだろうか、いや、ただの強面婆である。
しかし眉は山姥の住まう山のごとく高く鋭い三角を描き、黒々とした目の周りの滲んだ化粧はカッと目を見開いたかのように目力半端なく、時代を感じさせるウェービーな盛ヘアと歪んだ唇に引かれた紅が嫁き遅れた女の意地のようで尚恐ろしい。キセルを持たせて「ハッ!」と言わせてみたいが、婆の口調は別の誰かが口を合わせて話しているように優しげだ。それに癒されているのはTheエロオヤジである。やはり腐っても女は良いものだ。

「ちわーっす! お姉さん、僕たちにもラーメンお願いね!」

と、典型的な好青年フレーズで入ってきたのは雰囲気イケ麺、じゃねぇ、イケメソだ。

「あっ課長! 奇遇っすね! お疲れ様っす!」

90度の礼。体育会系の規律を学んできましたと言わんばかりの礼儀正しさを見せ付ける。よりにもよってうざやかな部下との邂逅。Theエロオヤジも運が悪い。
上げた顔には不自然なまでに左右対称の、ちょうど良い具合の濃ゆさで、絵に描いたような雫形の眉頭とくの字に曲がった眉山である。まずそこに目に行くこと間違いないだろう。いや、それ以外に特筆することがないのかもしれない。あとは程よく焼けた肌と、爽やかを演出させる黒髪短髪、鍛えているらしい均整のとれた身体である。

「あ、お疲れ様です、課長」

そこでようやく存在に気付くのがエセ爽やかの裏にいる線も影も細い少年、ではなく、中学生、魔法使い、でもなく、れっきとした女性だ。この春入社して間もないが、それでも数年分の幼さとアカは全く抜け落ちていない。若返りと言うにはちょっと芋臭い。何の魔法ですか。りでぃきゅらす。せめて女性として化粧をしませんか、と言うには勿体無い中性っぷり。
しかし、この自然魔法を解こうとするのが、この間違いなくナルシストで自己陶酔型のお節介、エセ爽やかだ。外見の作りこみ度が味噌だ。
エセはところ構わず恋愛相談に乗る。むしろ自ら悩みはないかと聞きまわるのだから「気遣い出来る俺って……」な一人で盛り上がれる自家発電可能な幸せタイプだ。しかし硝子のハートの持主だから空気を読むこと、作り上げた理想の自分像になることに一生懸命な健気な野郎なのだ。クールな美人同僚に相手にされないことに気付いても、逆上せずに「あんまり話したこと無いんだ」と周りに言い訳する小心者程度がちょうど良い。きっと将来好きな人に振られても犯罪に手を染めないだろう。
そしてそのご高説に相槌を打つ少年はラブや恋、ジュテームと言った言葉が好きな酸っぱい頭のメルヘンボーイ、過去に流行った乙男、ではなくれっきとした成人女性である。だから化粧しろ。
彼らはつまるところの「他所で勝手にフィーバーしていれば良いよ」な人種である。

何故か耳に入ってきてしまう、どこかから引っ張ってきたような恋愛論、恋愛格言、恋愛定義に、青臭さを武器にする歯の浮くようなLOVE&PEACEトーク。耳ジャックに耐え切れるものは菩薩のように何事も聞いていない奴かさらに上を行く奴くらいだろうか。
Theエロオヤジは席を立つ。Theエロオヤジには青臭すぎて食指が動かない、もっと加齢臭に塗れた話がお似合いである。ブタ予備軍はラーメンを腕で囲うようにしてがっついているので、周囲の様子は見えていない。腹の広いことだ。
エセらには去り際「ぺっ」と唾を吐き付けてやりたくなるものだが、ここは山姥の店。念入りに研がれた出刃包丁をいつ投げつけられるとも分からないここでは行動は慎重に。婆は優しくTheエロオヤジを見送った。

ネオン煌く現実的な外に開放されたTheエロオヤジは「さぁ、これからお持ち帰り用に都合の良い家出娘でも探しに行こうかな」といった面持ちで周囲を見回した。

「課長! ここにいらしたんですね。これからお帰りですか?」

――折角腐った話で忘れてたところだったのに。
お持ち帰りされたのは他でもない、Theエロオヤジの方である。






男同士で話し込むにはやはり飲み屋である。ビールジョッキを片手に肴をつつきながらTheエロオヤジは隣に座るオヤジ仲間に話を聞いてもらう。どこぞの誰かは思い出せない。しかし懐かしさを感じるその頭。「なにそれ、リーゼントってやつですか?」なサイドはすっきり、トップは膨らんでフロント?前髪はポヤポヤに泳がせた髪型だ。若干染めたような茶色が混じっているが全体的に灰色なのでよく見ないと分からない程度だ。釣り目とニヒルに嗤う口元には昔やんちゃしていたのだろうと窺わせる。だが痩せこけた顔と、鶏ガラのように痩せ細った身体、時折胃をさする様子に、昔もしくは現在進行形で何かあるのかと、憐憫の情を抱かずに入られない、ちょい悪い気持ちにさせられるオヤジ。人選ミスは間違いない。

「やっちまったもんは、しゃあねぇだろ」

過去に何かとんでもないことをやらかしてしまったに違いない、言葉に言い知れぬ重みと納得感がある、ちょい悪い気持ちにさせられるオヤジ。略してちょい悪系。
Theエロオヤジは顔に浮かぶ汗をハンカチで押さえた。ただそれだけでセクハラのような、つくづく損な顔である。

「でもな、男なら男気ってものを見せにゃあならん時がある、だろ?」

妙に鬼気迫る顔を、血走る目をTheエロオヤジに近づける。この顔相手によくやった。Theエロオヤジの挙動不審に彷徨う視線にちょい悪系は現役の頃を思い出したようだ。
最近では中々見られない、おでことおでこのぶつかり合い。喧嘩相手にそこまで顔を近づけられるのは関心と言うか、理解不能というか、冷めた若者の多いこの世代には縁の遠い光景である。例外は腐女子・男子で、実物は知らんけど妄想上はあるある美味しいネタだろう。
それはさておき、Theエロオヤジはまんまこの世代だ。不良漫画で例えるならば脇役が良いところ、やられキャラ、存在も語られないモブキャラが相応しい。サンドバッグを仮初めの姿とし、いつか己も何かすごいものに目覚めるのだと信じていた少年時代を抱えていたようだが、そんな兆候はまるで無いまま他人と目を合わせられないオヤジに成長してしまった。
若りし頃はただの根暗男であったが、今ではエロオヤジだ。第一印象はすこぶる悪く、女性からも常に一定距離(顔見も耐え得る距離)が引かれている。満員電車に乗る必要の無い田舎の会社であることがTheエロオヤジの救いである。

さてさて、Theセクハラオヤジに絡む元ヤン鶏ガラ男は周囲にとってどんな様子に映るだろう。まぁ、大方鶏ガラ男のコレ(小指)に手を出してしまったTheセクハラオヤジの「自業自得」といった冷めた感想をもたれる、といったところか。つまりTheセクハラオヤジに救いの手は期待できない。どうする、オヤジ。

「失礼。俺の課長に何されているのでしょうか?」

グッドタイミング。流石は美青年、展開をよく分かってらっしゃる。
鶏ガラ男は第三者の介入により周囲の様子が見えたのか、ちょっと唾を、いや調子を飛ばし過ぎたことに気付いたようだ。決まり悪そうに「ちっ」と舌打ちを残して小悪党の様にそそくさと去って行った。それが誤解を煽るってのに。まだまだ現役でいけそうだ。

「課長」

手を差し伸べる美青年。を見上げるTheエロオヤジ。客観的にはしょーもない呑んだくれ上司を引っ張って帰らねばならない哀れな部下、と言った図だが、事実そうだが、この手を取ればTheエロオヤジはこの間と同じ目に合う。それも自ら進んで、だ。

「帰りましょう」

どこに?もうどちらの家に帰ろうと、やることは変わらない。一緒に?この手を掴んだらしばらくは離してくれないだろう。
黙り込むTheエロオヤジに焦れたのか、美青年はTheエロオヤジの手を掴んだ。

「……自分で帰れる」

むくれているのか、ふてぶてしい顔でもそもそ話すTheエロオヤジ。ちっとも好印象を抱かせない、いや寧ろ「はぁっ?何や?はっきりしゃべらんかい!」とか何とか気の強い女なら言っているだろう。実際にそんなやり取りを目にしていた気がする。
しかし目の曇った美青年は穏やかに微笑み、優しく手を引きTheエロオヤジを立ち上がらせた。

こんなことってない。

Theエロオヤジはこんな犯罪面ではあるが、内心困惑している。気の強いせっかち女上司なら我慢出来ないだろうが、美青年は優しくTheエロオヤジの反応を待っている。

記憶を辿ってもこんなことはなかった。
物好きもいいところだ。絶対にナイと思っていたのに。

この手を握り返しても良いのだろうか。

Theエロオヤジと美青年は親子と呼ぶに相応しい年齢差であるが、それ以上にその見た目、美醜の問題でかなりの犯罪モノである。
しかし、もしも気にしないのであれば、他者の目に、一般論に、そしてこのオヤジに絡んだ鎖や重りのようなコンプレックスに、オヤジの世界はきっと変わるだろう。

愛はどこにあるのか、どこから来るのか、それは誰にも分からない。
だが、オヤジにも与えられる愛があっても良いのではないだろうか。

オヤジが美青年の手を小さく握ると、美青年はそれは嬉しそうに微笑んだ。それを見たオヤジも困ったように、穏やかな笑みをこぼした。


世の中は不公平である。どんなに天を仰いでも、嘆いても、頭を垂れても、不平等は変わらない。けれど、幸せはある。遠い場所にあったり、険しい場所にあったり、かと思えば分かり易い場所にあったり。必ず見つかる。見つけた者勝ちだ。

だからその手を取って、与えられる愛を幸せだと受け取ったのなら、Theエロオヤジは一つのハッピーエンドを迎えたのだろう。


幸あれ、オヤジ。他のオヤジと婆、乳臭い若人にも幸あれ。

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