memo
なんかひとりごと言ったりしてます。
兼、時々更新履歴です。いつも忘れます。
2011-09-11(日)
勇者×魔王@小話
ちょっとたぎったので。
勇者が悪いよ!
世界中から勇者だなんだと持て囃され、
おまけに倒した魔王の命を奪わず、
慈悲深いと言われた彼を、私は善人だとは思えない。
本当に彼が優しい人間なのならば、
人を襲わずに暮らしていた魔物の村を殲滅するはずが、
そもそも何もしていないのに危険だと判断するはずがない。
いくら外見が違っていようと、
同じ生き物だと、私はそう信じていたのに。
ある日突然に、彼は現れた。
そして仲間たちはすべて塵となり、風に消えた。
1人だけ残された、
魔王と呼ばれる私を、彼は生かした。
「殺しなさい」
そう何度も懇願した。
けれど彼は、その手を下さない。
彼の唱える呪文はただひとつ、
それが私を捕らえ続ける。
毎日塔から外を見る。
それしか出来ないでいる毎日。
ああ、もうすぐ彼が帰ってくる頃だろう。
*********
「殺す訳が無いだろう?」
初めて見たのは、本物じゃない。
透視の魔術で初めてその姿を見て、心を奪われた。
幸いな事に彼は魔王で、
その立場は、いつの時代だろうと、
実際にどんな存在だろうと、疎まれるものだった。
それに、俺は勇者だ。
人間を脅かす脅威を退治してやると、
そう王に告げれば、与えられたのは最強の武器に仲間に金。
それらで、平和ボケした魔族なんて、なんの苦労もせずに倒せた。
そう、殺したんだ。
なのに魔王だけは生かすと言って、
賛成の声をあげる国民たち。
馬鹿じゃないのか?
だけどその馬鹿共のおかげで、俺は彼を手に入れた。
殺してくれと彼は言うが、折角手に入れた物をわざわざ手放す訳無いだろう?
さあ今日も、愉しい夜がはじまる。
***
「こ、ろしなさいっ」
「頼む事が違うだろう?」
息も絶え絶えに今日もそれを口にする。
彼のすべてを手に入れるのと、
正しい言葉を教え込むのと、
果たしてどちらが早いだろうか?
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