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あなたへの愛でこの両手は塞がってしまった


2011-12-16(金)
彼の手は魔法の手。



シャンプーの良い香りと少しだけ指先に残る煙草の香りを消さずに今日も彼の手は器用に魔法を紡ぎ出す。
シャキシャキ鳴る軽やかな音と共に髪の毛は切られパサパサと黒のケープに落ちては床下に流れ落ちる。BGMは今流行りのジャズポップでセンスの良い選曲が常に心地良い。邪魔はせず、かと言って無視も出来ないミュージックに耳を奪われたらそれだけで眠ってしまいそうだ。

「眠い?」

笑う彼からも音が聴こえる。クスリ。
うとうとし始めた一護の髪の毛を手慣れた仕草で梳かしながら浦原は笑う。

「少しだけ…」
「学生さんはお疲れモードだ?今日、予定は?」

パサリ。伸びてきた襟足がシルバーの鋏で整えられる。パサリ、パサパサ。ジャズポップからブルースへ変わった瞬間にハスキーヴォイスの女が恋を嘲笑って嘆いて歌った。

「ん…ない…本屋よろっかな…あとはレコード屋…これ、誰?」
「adeleですよ。良いねレコード屋。何時まで居る?前髪も少し切ろうね。ちょっと、目ぇ閉じて?」
「ん」

額に触れる人差し指と目尻を引っ掻く様にして触れた中指からは仄かな煙草の香りが漂い鼻腔を燻る。
なんだかむず痒くなってフフと笑えば、なあに?と浦原もつられて笑った。

「なんでもない。あれ?今日は早番?」
「そ。だから一護さんが良いなら。一緒にご飯、どう?」

元より予定が真っ新な土曜日だ。学生の貴重な休みに予定を態と入れなかったのにはそれなりの理由がある。

「しょーがねえなー。リサイズでブラウニーパフェで手を打とう」
「ご飯じゃなくてデザートじゃない」
「甘いのが食べたい気分」
「フ、りょーかい。ご馳走致しましょう。はい出来上がり。男前が更に男前に」

バサーっと演技かかった動作でケープを取って首筋に残る髪の毛をファーではたき落とす。幾分かすっきりした首元に触れた指先は冷たくて心地良かった。
彼のムースを手に取り髪の形を整える場面が凄く好きな一護は完成された髪を見て満足げに微笑んで見せた。











整えられる。彼の魔法の手によって完成。


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