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あなたへの愛でこの両手は塞がってしまった


2011-12-22(木)
八度七分の声と脈絡も無いキス(曖昧だと言わない詮索ごっこにさよならをして)


浦原、君が八度七分の声を出す時は決まってナニカ後ろめたい事がある時で。
浦原、こちらを伺うチャコールの瞳はちょっとだけ猫の瞳の様だ。
なあに?答えるアタシにバツ悪く唇を尖らせてはそっぽ向く仕草はとても子供らしいっちゃあ子供らしいけど…言っちゃえば良いのに…なんて大人は子供の心情を見て見ぬ振りをするんです。ね、ズルいよね大人って。
君が構って欲しさに別の男と手を繋いでる場面を見てしまいました。アタシに気付いていない君は笑っていたけど本当は笑っていなかったね。毎日12時間とプラス残業三昧でろくにデートも出来ないアタシよりも、同じ制服で同じ時間を過ごせる彼の方が君を悲しませないし寂しい思いもさせないのかも。
だけど一護さん…きっと…きっとね。

「すきだよ。一護さん」

そっぽ向いたまま雑誌を読み始めた一護に、浦原は八度七分の声でそう言ってのけた。囁くと言うよりは淡々とした言葉の羅列だったけれど。
スパイスキャンドルが灯って刺激的だけど心地良い香りが部屋中に充満。風呂上がりな一護と浦原からは同じお香りが漂う。
きょとん、チャコールの瞳が浦原を見る。

「すき」
「な…っ、な、に?急、に…」
「ん。急だね」

ごめんね。だけど好き。
二人掛けのソファで其々別の事をしていたのが瞬時に同じ空間と時間を共有し始めた。
脈絡も無い浦原のキス。綺麗な額に贈られるキスがとてもくすぐったい。
一護さん。浦原の金色が一護を見据える。
きっと世界中の誰よりも、今この瞬間、君の事を一番に愛せるのはこのアタシ。

「ごめんね?」
「な…に?」
「ううん。大した事じゃない。ああ…なかないで。君が思ってる様な事じゃない。好き、ただそう伝えたかった。寂しくさせてごめん。だけど好き。すきだよ一護さん」

今度は一護が泣かない様にキスの雨を降らせた。







刹那の選択をしないのはきっと不正解だと思うけれど…今はこの心地良い後悔に愛着を持った


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