[携帯モード] [URL送信]


あなたへの愛でこの両手は塞がってしまった


2011-12-15(木)
恋の色を表してみました。


夕焼けが綺麗だった。オレンジに赤を混ぜてぐるぐる白で濁らせた様な夕焼けの色が薄汚れたカーテンの隙間から入ってきては真っ白いタイルを照らす。机と椅子と本棚の影を生み出しては黒のコントラストを植え付ける。
光と色彩の世界だ。
呟いたお前にロマンチック野郎、と貶したのは照れ隠しからで別に他意はない。
窓の外ではグラウンドで頑張る運動部の声が響く。チャイムの音は草臥れていてなんだか不格好。未だ時計の針は午後5時を指してるのに夕暮れの早い冬は既に夜の気配を纏って辺りを冷たくさせた。
紺色のカーディガンから香った煙草の匂いが、匂い消しの為に使われた香水の香りと混ざってやけに甘ったるい。

「またかよ…」
「なに?」
「煙草…止めろよ」
「おやバレた。」
「止めろつってんの」

パラリ、捲ったページの一説に書かれた文句をこの馬鹿に言ってやりたくなって、一護は眉間の皺を増やして浦原を睨む。

「アレがなきゃ生きていけない位にはもう依存しきってるから。ごめんね?」
「なにがごめんね、だ馬鹿が。バレたら謹慎処分だぞ生徒会長」
「バレないよ。そこまで馬鹿じゃない」

制服で煙草を吸ってる時点で馬鹿決定だ馬鹿め。言ってやりたくなったが、この男には何を言っても通用しないと分かってるから乱暴に胸倉を掴んで引き寄せてみた。

「なら、吸わなくても良い様に俺に依存しろ!馬鹿が!」
「わあ!すっごい告白!」

夕暮れのグランドからがやがや音がする。
赤に染まっていた図書館は既に薄暗く、蛍光灯の真っ白く安っぽいネオンがタイルを照らして反射して影を消して一護の顔を真っ赤に染めた。
あ、まっかっか。
馬鹿の一言に羞恥心を煽られる。ここで、大切な10代の青春を奪われた感触が確かに掌へと伝わった。











恋ってやつは夕暮れ時に感じる焦燥と似たり寄ったりである。


[*最近][過去#]







[戻る]

無料HPエムペ!