[携帯モード] [URL送信]

不透明な愛を君へ贈る


2013-03-26(火)
コピー:有体物の再製


まるで分裂してるみたいだ。記憶の断片が途切れ途切れで再生されてしまう。オリジナルなのかコピーなのか、分からなくなって、考える事も面倒になって、歩くのをやめて(逃げる術も見失って)膝を抱えてしゃがみこんだ。地べたにくっつけた尻からはひんやりと冷たさだけが浸透する。
アスファルトのグレイが空にも反映して世界は冷ややかだ。
世界を映し出す琥珀色が嫌いだった。
あの人が甘そうだって言う事が嫌いだった。
いつだって消毒液の香りがする白衣に身を包んだ潔癖症のドクターはこの体に触れる時だけゴム製の手袋を外す。
ふわりと鼻をつく潔癖症の香り。血色の悪い白い肌。月の様に淡い綺麗な金髪に獣じみた金色の瞳には少しだけ緑が混ざっている。
キミの瞳は甘そうで、好きっスよ。
ドクターがそう呟くのが嫌いだった。
まるで分裂しているみたいだ。体のどこかの一部、いや、もしかしたら心と呼ばれたモノが居座る場所(確か左心房付近)、そこからブツブツと音を立てて分裂していくみたいな気持ち。なんともいえない。気分が悪いのに、とてもホっとする。
きっと自分はコピーなのだ。
そう自覚したのはドクターの金色の中に自身のオレンジ色が反映されて視神経に入り込んで来た時。
あ、偽物だ。って心が叫んだ。
ひっく、とうとうしゃくりあげて泣き出せば、タイミングよくグレイスカイも泣き出した。
ドクター、今、どこに居るのさ?
ドクター、なんで居なくなったのさ?
ドクター…オレじゃだめだったのかよ。
ドクター、うそつき。
ドクター…好きだって言ったくせに。
所詮、コピーはコピー。到底、オリジナルに勝る事はなく可も無く不可も無く、ただそこに存在するだけの分離体。










生み出したモンスターが牙を向く日


[*最近][過去#]









[戻る]

無料HPエムペ!