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不透明な愛を君へ贈る


2013-03-19(火)
世界の終わり、なれの果て


「キミに出会った事でアタシは孤独を知ってしまった」

男は被害者面でへにゃりと微笑んだ。言われた方はと言うと眉間に皺を深く刻みながら男を大層憎たらしげに睨んでいた。ギリ、そんな音が聞こえてもおかしくないくらいに、青年は下唇を噛み締めている。彼の悪癖、言葉を飲み込んで許そうとする反吐の出る悪癖を見て、浦原は微笑んだ。

「だからここでお別れです。」

お終いだよ何もかも、言葉裏に潜めた汚い言葉を同じく飲み込んで尚笑う。大人らしく裏切りの体裁を取ろうじゃないか。腹で燻る感情が豪を煮やして体を嫉妬の炎で包み燃やす前に、ずらかろうではないか。浦原は笑いながら踵を返して背中を見せる。
と、小憎らしいまでに広くて薄っぺらい綺麗な背中に投げて寄越したのは新調したばかりの革靴で、一護自身、驚きを隠せないまま目を見開いては振り返る浦原の冷め切った瞳を真っ向から受け止めた。

「何するんスか。綺麗さっぱり後腐れなく手放してやろうってんだ、大人しく従え、クソガキが」
「ざけんな、ざけんなよ浦原っ!今更だろうが!さんざっぱら人の体を好き勝手して…ヤ、やり逃げじゃねーか!何が孤独だ!それも今更だろう!手前で望んだくせに今更被害者ぶるんじゃねーよ!きったねえ男だよほんっとお前ってやつは!その孤独で一人ぼっちな世界に引きずり込んだくせに!お、れの方が被害者だろうが!それを今更…まさら…っ、孤独がいやだっつーなら俺から離れるんじゃねー!」

ぽとりと落ちた革靴はうまい具合に水溜りへ落下。ぽちゃんと鳴った水音に涙も同時に溢れては零れた。

「逃げんな浦原、っ!戻ってこい!戻れ!」

目にたくさんの涙を溜めて泣く癖に、悪癖も直さずそのままな癖に、ちっとも人の言う事なんて聞かないで突っ走る癖に、沢山の人に愛されてる癖に、キミはこんなアタシを選ぼうと両手をめいいっぱい伸ばして戻れと命令する。このアタシに、命令するのはきっと世界中どこを探しても横暴なキミだけ。

「…アタシ、追われるのは好きじゃないんスけど」
「追うのが俺だったら好きだろう?」
「降参しました」

ホールドアップの代わりに孤独を教えつける両腕に戻っていく。













さしつまる所、アタシにとっての世界の終わりがキミだって事


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