■ゼンマイ時計
【日記】
2009-03-28(土)
ある女性の話
私は中国のとても貧しい村で幼少期を過ごしました。
とても貧しかったけど、まわりの家も同じような生活だったし、年の近い友達もたくさんいたので自分の事を不幸だと思った事はありませんでした。
そんな村で育ち、大人になったある日、少し大きな町から男の人が村にやってきて、私に
「僕のところで働かないか」
そう言ったのです。
何日か悩んだ結果、両親に裕福な暮らしをさせてあげたいと思い、男の話を受け入れて町で働く事になりました。
その男はお金持ちで、宴会が大好きでした。
私の仕事はその会場でモデルの様に衣装を変え、宴会の間を歩き、たまにお酌をする事。
特に体を傷つけられる事はありませんでしたが、その男はものすごくケチだったのです。
給料という給料はもらえず、住む場所とご飯が食べられるくらいでした。
決心して、町に出てきたためすぐに村に引き返す事も出来ずただただ時間が過ぎていきました。
そんなある日、村の友達が町を訪れて私に会いに来ました。
私は時間を忘れて友人たちと話をした後、別れを惜しみながら彼らを見送りました。
それからでした。
何故か故郷の友人からの便りが少しずつ減っていったのです。
年を重ねていくにつれ、こういう事は必然的に訪れるものだ、なんとか淋しさを自分自身で納得させながら毎日同じような日を過ごしていました。
そして、歳を重ねた私は少しずつ仕事がなくなり、さらに生活が苦しくなってきたころ
病で倒れました。
医師から、もう長くはないと言われました。
故郷から父親、母親そして、あの日以来の友人達が駆け付けてくれました。
床に伏せる私に、友人は
「せっかく街でいい生活を手に入れたのにな…」
そう言いました。
「いい生活〓どうしてそう思うの〓」
「あんないい服着て、いい給料貰ってたんだろ?」
私はあの日以来連絡が少なくなった理由を察し、言葉を失いました。
故郷のみんなは私の格好から裕福な生活をしていると思い、もう遠い存在になってしまったと感じていた事。
お金を持っているはずなのに、ちっとも家族にも、友人にも顔を見せに故郷に帰って来なかったこと。
色んなすれ違いをその時やっと気付きました。
私は街に出て、お金を手に入れたわけでもなく、そればかりか友人との関係を失った。
そんな淋しい人生だった事を今やっと気付かされて涙が溢れました。
そのまま私は最後の最後に大切な人たちに見送られ、生涯を終えたのでした。
と言う、僕自身の1200年前の話です。
都会に出て、モデルみたいな仕事でいい服を着ていたばっかりに友人をなくし、淋しい生活を送ったそうです。
だから、自分がどんな生活をしていようと、どんなに環境になろうと、
今居る大切な友人を無くしたくないと思っているらしいです。
手に入れたい何かより、今ある大切な人を失いたくないと思います。
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