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memo
2019-10-25(金)
永遠の〇〇3 ※NL注意

バスソルト番外編
NL展開 苦手な方はご注意




どうしていいかわからない空気が流れる。

「そ、そうよ。私、白河霞(しらかわ かすみ)。雪弥のお姉さまなの、よろしくね。おほほほほ」

雪ちゃんのお姉さま、もとい霞さんは後ずさりしながら挨拶した。しかしその手は、驚きで唖然としている征に掴まれたままだ。

「ちょっ、ちょっとごめんなさい、手を放してくださるかしら」
「あ、ああ…」

霞さんに言われて、今度は征は素直にその手を放した。霞さんはしめたという顔を一瞬うかべて、くるりと身体を返してドアを出ようとしたその時。

「何してるの」

ドアの方から聞こえた声は、俺が最も愛してやまないもの。

「げ」

呟いたのは雪ちゃんでも征でもなく、霞さんだった。ん…?げ、って。

「霞?なんでこんなところにいるの」
「あ、あら奏じゃない。お久しぶりね。しばらく見ない間にこんなに育っちゃって。ご先祖様に筍でもいらっしゃるのかしら?」

筍って。独特の表現すぎるでしょ。

「私、散歩の途中ですのでこれで失礼するわね」
「なんでか姫に面会に来てたらしいよ」

絶対に通用しないであろう言い訳をしながら、必死にこの部屋を出て行こうとする霞さん。そんな霞さんに間髪を入れずに雪ちゃんのつっこみがはいる。

「……なんで?」

訝る奏。奏は霞さんを上から下までじっと見てから、携帯を取り出した。

「ちょ、ちょっと待って。奏あなた今どこに連絡しようとしてるの」
「…」
「霧乃ちゃんでしょ、絶対そう。あなた、霧乃ちゃんとずぶずぶに癒着してるものね」
「霧乃に知られたら何かまずいことなの?」
「いや、えーっと、あー…と。まあ、少し予定より早いけど、仕方ないか」

霞さんは何か独り言のようにぶつぶつと呟いてから。

「雪弥、奏。実はあなたたちにもすっっっっっごく大事な話があって来たのよ」
「はあ?意味わかんない。脈絡なさすぎ。馬鹿なの?」

逃げようとしたり、大事な話があると言ったり。確かに脈絡がない。そもそも、なぜ雪ちゃんのお姉さまが俺に面会を申し込んできたのか。

「何。大事な話って」

奏もらちがあかないと思ったのか、本題に切り込む。

「こんな大事な話、こんなところでできるわけないでしょう!?」
「まさかの逆ギレ。なんなのお前生理中なの」
「はいセクハラー。出るとこ出てもいいのよ、雪弥」
「…」

セクハラの訴えというのは姉弟間でも成立するのだろうか。

「じゃあその大事な話とやらはどこでするの?」
「もちろんうちよ。実家。だから二人とも私と一緒に車に乗ってね」
「はー!?なんでうちに帰らないといけないわけ?わざわざ」

あれよあれよと目まぐるしく移ろう話の展開に、俺と征斗はただ黙って聞いているしかできない。

「…まあいいや。らちがあかないしめんどくさい。とりあえず家行くわ。寿也も一緒に帰るから、用意して」
「え」

雪ちゃんの家に?俺も?今から?

「あ、寿也君はダメよ」
「は?」

じろり、と奏にひと睨みされても動じない。さすが白河家の女性、なのだろうか。

「なんで?」
「え?なんでって、えー、あ。ほら!寿也君は別の予定が入るかもしれないじゃない?ね?ね?」
「え?」

今のところ予定はない。でも霞さんのこの様子だと明らかに俺は行っちゃ不都合なのだろう。

「じゃあ俺も行かない」

はあ、とため息を吐いてから奏はきっぱりと言い放った。

「だめ。奏は帰って来なさい。お姉さまの命令よ」
「俺はお前の弟じゃないし」
「まあそうなんだけど。でも、寿也君は本当にダメなの。きっと、多分ね。予定ができるはずなの。ほら、実家からとか」

必死に俺はこさせまいとしてる。流石にこんな状態でほいほいついていけるわけもないし、なんだかよくわからないけど、もしかしたら本当に実家から呼び出しがあるのかな?俺も。でも雪ちゃんのお姉さまがうちの実家の動向なんて知るわけもないんだけどなあ。

「…じゃあ征斗なら連れて帰っていいの?」
「まさと?」

雪ちゃんの言葉に、霞さんは目線を雪ちゃんの方に向けた。

「黒田征斗。俺の恋人」
「くろだ、ってあの黒田?輸入インテリアの」
「そうだけど」

霞さんは恋人、の部分には反応せずに黒田の名前に反応した。まあ黒田の名前は大きいので、反応するのは当然かもしれないけど。

「じゃあだめなんじゃない」
「はあ?じゃあって何よ、じゃあって」
「だって、黒田はあっち派だし……」
「なんの派閥だっつーの」
「とにかく。雪と奏は私と一緒に帰る。寿也君と征斗君は予定が入るまで待機。いいわね?」

何が何やらわからぬまま、霞さんはそうざっくり話をまとめて部屋を出て行った。俺たち4人はよくわからぬまま、その決定に従う他、このわけのわからぬ状況を打破することはできないようだった。
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