ショートストリー(SS)置き場 読み終ったあとに感想などをくれると嬉しいですm(_ _)m 2008-02-27(水) Devils-Gate【中編】(SS) 〉俺はいつの間にか気絶していた。特に気絶するような場面は無かったが、何故だろう…? それに破壊された玄関の扉も元通り、きちんと修復されていた。 それから4日。 俺はその事で頭が一杯で、学校の授業も集中できずにいた。 家でも美麗に茶化される始末で、ボーッとする度に「恋でもしたのぉ〜?」と不気味な笑みで言われてしまう。 〉しかし5日目の放課後。扉は開いた。 『ギィィ…』 ――バタン。 「久しぶりね。人間」 学校の屋上で、西日を背に黒い翼のヤツは現れた。 「身体を再生させるのに少し時間かかっちゃったわ。まぁでも、どこぞの神様が天地創造するよりも早いけどね…」 見覚えのある紫の長い髪、そして見栄えのない胸。 確にルシフェルだった。 「うるさいッ!!胸なんてただの飾りよ!!」 「いや、何にも言ってないし…」 「アンタの心の声が聞こえたのッ!!」 睨まれて黙る俺。 見栄えのない胸と遠回しに言っているのだから、直答で『貧乳』と言われるよりはマシだと思うのだが…。 〉「それよりも、ミカエル。早く出て来なさい!! 決着つけてあげるわ!!」 ルシフェルは剣を構えた。 『ギィィ…』 ――バタン。 扉は見えないが、開閉音と共に白い羽根が舞い、ミカエルは降り立った。 「ルシフェル、貴方も懲りないわね…」 「当たり前じゃない。アタシはね、アンタの翼が黒く染まる姿が見たいの…」 ミカエルも剣を構えた。そして目は鋭く、冷たい視線を放っている。 「次は仕留めます!」 柔らかい風が俺たちを包み込んだが、その風は一気に爆風へと変わった。 剣を交える天使と堕天使。激しい攻防が繰り広げられる中、俺は黙って見ているしかなかった。 〉戦いはとても美しく、白と黒が混じり合い混沌を産み出していた。 一際輝く金髪がとても眩しく、手には届かないと思える程で、俺はそれに見とれていた。 〉「ハァハァ…」と二人とも息が上がってきたのか、お互い剣先を地面につけている。 「さて、そろそろ前回の続きの話をしようか、人間」 前回の話の続き。ルシフェルは本当の事を話してやると俺に言った。 ミカエルに出会ったときからある違和感。俺はそれがずっと気になっていた。 俺は真実が知りたい。 「教えてくれ、ルシフェル。この違和感は何だ?」 ルシフェルは息を整えると、悪魔の微笑みを浮かべた。 〉「まぁ、アタシよりかはミカエル自信に聞いた方が良いわね。そうでしょ、美麗?」 ルシフェルはミカエルに向かい、そう言った。 美麗? なぜ妹の名前が出てくる? 「アンタ、本当は主たる神にその人間を殺せって、命令されてたんじゃない?」 「……言うな」 「だって、人間の記憶の隙間に入り込んで、意味もなく妹になりすます理由が無いもの」 「……言うな!!」 「神に逆らってまで、殺せない理由があった…」 「言うな、言うなッ!!」 ミカエルは目の色を変え、やみくもに斬りかかった。 しかし剣はかすりもせず、ルシフェルは再び悪魔の微笑みを浮かべた。 「アンタ、その人間の事が好きなんだろ?」 ――グチャ。 ルシフェルは左手で剣を受けとめた。剣は掌を突き抜け血を浴びる。 そして二人も返り血浴び、ミカエルの白い翼に赤い斑点が付いた。 〉ミカエルの顔は絶望で満ちていた。ルシフェルの左手に突き刺した剣を放棄し、フラフラと後退した。 「あ゛あ゛あ゛――」 ミカエルの息が詰まる。そして苦しそうに嗚咽し、膝から崩れた。 「それだよ、その絶望した顔! 最高だね。天使が堕ちる瞬間。たまんないね」 ルシフェルが空高く笑う。 それに共鳴するように、ミカエルが悲鳴を上げた。 赤く斑点の付いた白い翼は、根の方からジワジワと漆黒を纏いはじめ、終には一色に染まってしまった。 『アンタも堕天使だ…』 5日前のルシフェルの言葉が蘇る。 ミカエルは神に逆らい、人間に恋をするという禁忌(タブー)を犯した。故に、神の聖霊ではいられなくなった。 〉日も沈みかけ、月や星が少しずつ輝きはじめた。 ルシフェルは左手に突き刺さった剣を強引に抜くと、見下すような言葉と剣を、ミカエルの前に投げた。 「天使が人間に恋をするなんて傑作だよ。でもまだ決着がついてないからさ。ほら、早く立ちなよ」 ミカエルは剣を手に取り、それを杖がわりにしてヨロヨロと立ち上がった。 「確に、全てルシフェルが言った通り、居るはずのない妹にもなりすましたし、主たる神の命令にも背いた」 奮えた声でミカエルは言った。 そして奮えた声のまま、息遣いも整えず何かを決心したのだろう。 剣を両手で構え、再び口を開いた。 「それでも私の『好き』という気持ちは変わらない!」 ルシフェルも剣を構え直した。 「そうこなくっちゃ。次はもっと深い絶望を味あわせてあげる」 〉そして再び剣を交えようとした瞬間、扉が開いた。 『ギィィ…』 音は天空から聞こえた。 それに扉は一つではなかった。 数は無数。 空一面に数えきれないほどの扉が出現し、中からは光が射した。 そしてスポットライトのようにルシフェルを照らすと、三体の天使が舞い降りた。 〉「四大天使か!?」 ルシフェルが呟く。 しかし降りたのは三体。だからミカエルを含め四大天使なのだろう。 そして三体の天使はミカエルの前に足を着けた。 「醜い姿ね…。ミカエル」 一人の天使が言った。ミカエルは唇を噛み、悔しそうに口を開く。 「ウリエル、主たる神は何と…?」 「もちろん貴方を裁かれるそうだ。あと、ルシフェルの始末は四人でやれと言っていた」 「では、これが四人でやる最後の仕事ですね…」 「あぁ。全く…、残念だよ」 「Devils-Gate【中編】(SS)」へのコメント コメントはありません。 コメントを書く [*最近][過去#] [戻る] |