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SS×Short Short
2009-07-29(水)
新月 -CCS-


―ひゅう ひゅぅ…

息を吸うたびに、むしろ息苦しくなっていく。
穴の空いた風船の様に、空気の漏れる音が喉を鳴らす。

―ぽたり ぽた

白いはずの服が、紅く紅く染まっていく。痛いのか熱いのか。
感覚は、もう随分失われているように思えた。
途切れた布を伝って、灰色のコンクリートに紅い水溜りを造ってゆく。


わずかな力で開けた瞳からは、四方を囲むコンクリートのビルと、ただ真っ黒な夜しか見えなかった。

今日は新月。
月も 何も 光が、見えない。





力が入らない拳の中で、剣の冷たい輪郭が妙に生々しく分かる。
切っ先には人のものとは思えない、どす黒い液体がこびり付く。
目の前に在った『物』は、震えが止まって数瞬後、跡形もなく塵になって空に消えた。

残ったのは体の傷と、何かを貫いた痕跡と、感触。


「さ…く、ら…」


ようやく呟いた名前は、俺の光。唯一無二の、汚れ無き存在。

腕も脚も瞼も、全身が動かない。
閉じかけた瞼の先に、ビルと夜空の狭間できらりと光る星を捕えた。



あぁ、あんな所に光はあったんだ。

俺の星、俺の光。
お前が輝くためなら、俺はいくらでも闇に身を染めよう。
新月の様に、この身を隠したって、構わない。
それでお前が、常よりひと時でも、瞬いていられるなら。


最後の光を捉えた刹那、意識は完全に遮断される。
カランカラン、と剣が転がる。

転がった先に、懐かしい気配と、悲しみの気配が感じられる。


そこには涙を流す少女が、立ちすくんでいた。








―新月―
(汚れなんて知らずに いてほしかった)










――――
ツバサもCCも小狼君は自己犠牲の強い人なのかなと思います。
他人よりも自分、自分の身を訂してでも守りたいものを守る。
それは強さかもしれないけど、HOLIC的にいえば諸刃の剣なのかな?
CC世界ではNG部類の流血やってしまいました…ちょっと自分でも書いてみたくなって(汗)
駄作失礼いたしました!









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