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SS×Short Short
2009-06-27(土)
ごめんなさい ありがとう(27巻)




砂の国での別れ、出会い、決意。

『私はこれからも 誰かを傷つけて 何かを奪う 自分勝手な理由で』


自分勝手な私の願いだった。

たとえ、あなたを傷つけても

たとえ私という存在を奪ってでも



『どうしても…取り戻したいの 貴方の心を』


罪の代償に、何か見返りを受けても

どうしても、どうしても、取り戻したかった。

もう一度、さくらって呼んで欲しかった。

笑った顔を、見たかった。

その瞳に、私を映してほしかった。


ナクシタココロを、取り戻したかった。



その願いのためだけに、私はあなたの刃を受けた。




―ごめんなさい ありがとう―




ゆらゆら揺れる、暗闇の中。
すう、と瞳を開けると、ひらひら舞う桜にきらきら光る硝子。
暗闇の中には、小狼君が立っていた。


「しゃお、らんくん…?」


私に向けられた瞳の色は琥珀。
でも全身で、本能で、分かる。

あの人は、彼は。
私の一番大切な、『小狼君』だ。


「小狼…くん」

「………」


私に伸ばした手の平を、小狼君は何も言わずに握りしめた。
空虚でどうしても動きだせない距離だけが、2人の間に生まれる。

私を見つめる瞳の色は悲しみ。
悲しくて、でも嬉しくて、泣きたくなる。

あの人は、小狼君は。
ナクシタココロを取り戻したんだ。


「小狼君…!!」


気づけば私は、『小狼君』の胸に飛び込んでいた。
ぎゅっとしがみつく布越しに伝わる、じんわりと温かい温もり。
私たちがまだ生きているんだって、今更ながら実感する。
びくりと大きく震えた彼の体を、まるで離さないというように強くしがみついた。


「…ごめんなさい、ありがとう」





傷つけて、ごめんなさい

悲しませて、ごめんなさい


傷ついてくれて、ありがとう

悲しんでくれて、ありがとう





―ごめんなさい ありがとう―
(どんなことをしても 取り戻したかったもの)







―――――――
春雷記のさくらが「ごめんなさい ありがとう」というセリフを聞いてうわああぁってなってしまいました。
このセリフで前にも書きましたが、この一言にはいろんな感情が含まれていると思います。
「ごめんなさい ありがとう(27巻)」へのコメント

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