フリーワンライ
Twitterでの週一の60分間のお題をもとにショートストーリーを置いていきます。
2020-12-13(日)
旅人
【第143回 二代目フリーワンライ企画】本日のお題
答えの出ない問題
行くあてのない旅の途中
手も足も出ない
忘れ物
浮世離れした性格
この中から一つ以上選んで執筆してください!
[旅人]
俺は旅をしている。いつからかわからないが様々な国を渡り歩いているようだ。
自分の事といえば名前が藤沢大樹(とおざわたいき)ということしかわからない。鏡で見たところ16、7歳の男らしい。
目的の分からない行くあてのない旅の途中のようだ。
そんなある日俺と同い歳位の男が話し掛けてきた。穏やかで不思議な雰囲気の奴だ。こういうのを浮世離れした性格というのだろうか。
「大樹は僕の事覚えてないんだね」
「初対面だろ?」
そう答えながらも違和感を感じる。
知らないはず。なのにそうじゃない気がしてしまう。
「名前なんて言うんだ」
聞きながら自分はいつ名乗ったのかと疑問が浮かぶ。
「斎(さい)だよ」
「珍しい名前だな」
「それだけ?そろそろ帰ろうよ」
帰ると言われてもどこにだ?それにこいつは信用できるのか?
「近づくなっっお前なんか知るかっっ」
とっさに手で払う、そして右手に刀を手にしている事に気づく。
よく分からないが丁度いい。
俺は刀を両手で構えて斎に向ける。
どういうわけか持ち慣れている感覚だ。
「そうくるか、受けて立つっっ」
俺が振り下ろした刀を斎も刀で受け止めた!
何度攻撃を仕掛けても読まれているみたいに防がれてしまう。
斎が向かって来ようとしていたから足元の土を蹴り上げて目眩しをしたが後ろに飛び退いたため何の効果もない。素早いっ!
攻撃を防ぐだけで手一杯っっ
「いい加減に目を覚ませっ」
力強い一撃に俺の体が吹き飛び気がついたら地面に転がっていた。手にしていたはずの刀も飛ばされた。
ちくしょう手も足も出ないとは。
「君は戦闘中にダメージを喰らってこの世界の果ての方に吹き飛ばされてたんだ。記憶がないのもそのせいだよ。」
そうだ俺はいつだって斎には勝てなくて、そうかそういう事か。
「思い出してきた。俺は夢の中の化け物と戦う浄化屋で手強い相手だったな。どうなったんだ?あ、けどお前がここにいるってことは倒したんだよな?」
「そうだよ。あと大樹はまだ見習いだからね。元に戻ったなら現実に帰るよ」
もしあのまま記憶が戻らなかった俺は夢の中で倒れて元の世界に帰れなかったのだと思うとゾッとする。
それにまだまだ見習いを卒業するのは難しいのだと思い知らされた。
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