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フリーワンライ Twitterでの週一の60分間のお題をもとにショートストーリーを置いていきます。
2020-03-28(土)
本日は猫日和

【第106回二代目フリーワンライ企画】本日のお題
深刻な〇〇不足(〇〇内は自由)
妙な癖がある
花嫁修業
早い者勝ち
野生に返る
この中から一つ以上選んで執筆してください!

[本日は猫日和]

足りない、足りないっっ!
両手をのばしおぼつかない足取りで広い建物の中を歩く。
昼間で人通りが多い場所だが誰もが彼を避けていく。
その様子を陽子はハンバーガー屋の席からガラス越しに見ている。
「あれは何?不審者っていうかゾンビみたいじゃない?」
テーブルを挟んで向かいに座る裕子に聞く。
裕子はこのあたりには最近よく来ているらしいので彼のことも知っているのではないかと何となく思ったのである。
「あぁあれは本能のままに動いているっていうかいわゆる野生に返るってやつかしら」
「本能はともかく野生って、こんなにひとけがある場所なのに放っておいていいの?」
「いいのよ。しばらく見てなさい。それよりもアンタ花嫁修行はどうしたの?この間付き合いだした人がいるからいいきっかけだし頑張るって言ってなかった?」
「彼の方が私より料理上手なんだよねぇ」
料理以外にも頑張る事はあるのではと思いつつあいづちを適当にうつ。
何事でも本人にやる気がなければこちら言葉は聞いてもらえないのだと長い付き合いでわかっている。
相変わらず不審な動きをしている彼を見る。
店の壁に付けられた時計を見てそろそろだと思う。
建物の中がザワついてくる。
やはり定刻通りだと心の中で感心する。
「陽子、通りを見て。」
「え?」
ざわつく声はある音にかき消されていく。
「なんなのあれ!」
彼女が驚くのも無理ない。
建物の通りを埋め尽くす猫の大群が駆けていく!
猫たちの無数の泣き声と彼の歓喜に満ちた叫び声だけが響いていた。
「いったい何だったの?」
「さあね。月に一回彼がああなるとどこからか猫たちがここを駆け抜けるの。目的は解らないしどこにいくのか誰も知らない。ただこれだけは言えるわ、彼は深刻な猫不足になると挙動不審になるの。それが解消すれば元通りだよ。」
彼女の目には普段、正常に動く案内ロボットが映っている。

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