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偽りの名 呵々闘諍の日記(力水の書いたやつ) 決闘時空まとめページ
2012-11-17(土)
決闘時空(デュエルスペース)第五話 Part2

決闘時空 第五話「作る者」Part2 続き

「も、もう終わりだー!!」
基は頭を抱え込み蹲る。さすがにやり過ぎたと思ったのか、周りの女子生徒達は黙っていた。
「大庭さん…。」
「大庭君…。」
吉井も天神も黙り込む。どんな言葉を掛ければいいのか、今の二人には思い浮かばなかった。
「うう、もうお婿にいけない……。」
基が情けない声を呟いていると、それを見かねたのであろうか、見城が基の方に詰め寄って来る。
だが、周りの生徒達とは違って、見城の顔には笑みが含まれている。見城はしゃがんで基と同じ目線に顔を合わせると顔を伏せている基に話しかける。
「そんなに落ち込むなって!大庭は、大庭だろ?」
「け、見城さん…。」
見城に励まされ、顔を上げる基。見城の何でもない一言に彼は心が満たされているようだった。
「それに、すっごく似合ってるぜ!もっと自信持って良いって!!」
「…………。」

(そういう意味じゃねーよ!!)

周りにいる生徒達は心の中で総ツッコミを入れた。見城は基が落ち込んでいる理由を勘違いしているのだ。見城はてっきり、基は下手な女装を見られて自信を喪失しているものだと思い込んでいるのだ。
本当の理由は想い人の見城に女装を見られたことに対するショックである。クラスの生徒達も吉井も天神も事情を知っていたため、黙り込んでいたのだが、見城の予想外の言動に驚きつつも半ば呆れていた。

「に、似合ってますか…。はい、なんだか自信が湧いてきました…!」
「おう!学園祭、楽しみにしてるからな!」
(それでいいのかよ!)
ともあれ、嫌われていないことがわかったのか、基は立ち上がって元気を取り戻しているようであった。周りの方も一安心している。
「あの、ちょっといいでしょうか?大庭さんを借りて行きたいんですが…。」
場の空気が穏やかになったのを見計らって吉井が切りだす。学園祭ムードではあるが、吉井達生徒会にとっては、昨日の事件を始めとしたミ・イザナに関する事件を解決することが第一優先である。そのため、事情や対策を知っている基にはここから一旦離れて協力してもらわなければならない。当然その事を充分招致している基は頷いて返事をする。
「すみません、みなさん。僕、ちょっと用事があるので、抜けさせてもらいます。」
「悪ぃな、みんな。あんたたちの大庭借りて行くぜ!」
「ええ、見じょ…じゃなくて、生徒会の人達からの頼みだもの、断れないわ。」
執事姿の女子生徒は快く承諾する。その瞳の中には基と見城の姿が映っているということを当の本人達は気が付いていなかったのだが。
「みなさん、失礼しました。学園祭、盛り上がるようにお互い頑張りましょうね!」
天神に連れられて基達は教室から出て行った。天神の言った事から推測し、クラスの者達は、基が生徒会の学園祭での出し物の手伝いをしているのだろうと理解した。


「さて、大庭君、これからどうしたらいいのか、何か案はあるかしら?」
基達は生徒会室に着き、席に座って今後の活動方針を練っていた。何故か基はメイド服のままであったが…。
「僕は今までダークシンクロの使い手たちと何度かデュエルをしたことがありました。その人達の共通点として、元々デュエリスト能力を持っていたこと、夜にデュエリスト能力を持つデュエリスト達を襲っているということです。」
基は事件の加害者であるダークシンクロ使い達の特徴について纏める。
基の話を聞いて、吉井達は納得していた。昨日の生徒会OGである栗原もデュエリスト能力を2年前持っていた。それから2年経っている今なら20歳となり、デュエリスト能力を失っている可能性は高い。さらに基と夜にデュエルをしていたため、特徴と合致していた。
「じゃあ、夜に外出してミ・イザナを見つけて倒せばいいんだな。」
「ええ。僕もそう思って外出していました。そんな時、都市伝説の話を小耳に挟んで、昨晩は学園の中を探索していたんです。そうしたら、丁度栗原先輩と出くわしてデュエルになりました。残念ながらミ・イザナの姿は確認出来ませんでしたが…。」
基はミ・イザナを発見できなかったことを悔しそうに思っていた。ミ・イザナを倒さなければ、延々と被害は広がるばかりで闘い続けなければならない。
「えっと、ミ・イザナってどんなやつなんですかね?探そうにも特徴が解らないと見つけられない気がします。」
吉井がミ・イザナの容姿について尋ねると基は困った感じで黙っていた。少しすると申し訳なさそうに口を開く。
「それが、僕もリンネから聞いた話なので具体的な特徴までは解らないんです。都市伝説の話にあるように少女の姿であるとしか…。」
「そうでしたか…。」
吉井は自分で聞いておきながら基が知らないのも無理はないと思った。ミ・イザナが封印から解き放たれたのは今から一年以上も前である。それから基は闘い続けているというのに、未だダークシンクロ使い達は存在するのである。それは基がミ・イザナの存在に気が付くよりも前にミ・イザナがダークシンクロ使い達を作り上げているということの裏付けである。
「ですが、栗原先輩は天神さんを狙っているようでした。ミ・イザナの目的にデュエリスト能力者を襲う事が含まれているのなら、天神さんを警護するのが得策だと思います。」
基は今までの状況を整理し、策を提案する。学園内にミ・イザナが現れた事、栗原が天神を狙っている事を考えれば、デュエリスト能力を所持している天神を守るという結論に辿り着くのである。
「そうだな。こっちから出向いてやるのは難しいかもしんないけど、まずは天神を守る事を考えなきゃいけないな。」
「ちょっと待って、見城さん。」
「なんだ、天神?」
見城の後ろ向きな発言に対して意見があるのか天神はストップをかける。天神の方も何か考えがあるようだ。
「私が狙われているかもしれないのは解ったわ。でも、守りに徹するよりかは、私を囮にした方がいいと思うの。」
「天神!?」
「天神さん!?」
天神の提案に見城と基は驚く。確かに天神の言うように防御に回るよりかは、彼女を囮にした方がミ・イザナと遭遇する可能性は上昇し、事件の解決にも近づくであろう。しかし、それは仲間である天神を危険にさらすことに他ならなかった。
「わかりました、その案でいきましょう。」
意外にも天神の提案に乗ったのは吉井であった。見城と基はさらに驚くが、吉井の方は動揺している素振りは見せていなかった。吉井は天神なら大丈夫だと信じ切っていたからだ。
「ありがとう、吉井君。」
二人の信頼し覚悟を見て、見城と基は折れたのか、考えを改める事にした。
「仕方ないな。天神に危険を背負わせることになるかもしれないけど、それでいくか。」
「……すみません、僕がもっと早くに退治していればこんな事にはならなかったんですが……。天神さん、よろしくお願いします。」
「大丈夫よ、二人とも。それに、私だってデュエリスト。逃げるより、闘う方が性に合っているわ。」
かつて引きこもっていた自分と決別するかのように天神は闘う意思を見せる。見城と基は逃げるようにと、天神にとって失礼な事を言っていたことを反省した。

「それで大庭君、ダークシンクロ使いの人達と闘うに当たって、何か注意すべき点はあるかしら?」
全国大会の時に天神は吉井が対戦相手のデュエリスト能力を事前に話そうとしていたのを断っていた。だが、天神は、闘いはするものの、今回の件は慎重に行くべきだと踏まえて基にダークシンクロ使いについて詳しく聞く事にした。
「ダークシンクロ使いはそのヴァンガード能力で普通のデュエリスト能力者のレベルをマイナスの能力に書き換える能力があります。つまり、デュエリスト能力を前提にしたデッキの構築は相性が最悪になります。なので、使用デッキの方は一般的なデュエリストのもの、その中でも強力な部類のデッキ構築で挑むのがベターです。」
「ということは、吉井君や見城さん、ランクの能力を持つ大庭君なら大丈夫ね。」
「天神さんも大丈夫だと思いますよ。能力を失っても天神さんの今のデッキはかなり強いですし。」
「そうだぜ。能力なんか関係なくても天神は強いからな!」
吉井と見城の励ましの言葉を聞いて、嬉しかったらしく天神はほほ笑む。
「二人ともありがとう。万能のデッキを追い求めている吉井君に、能力を失っても勝ち続けている見城さんがそういうなら大丈夫そうね。」
「どうやら余計な心配だったようですね。」
基も3人を見て杞憂に終わったと思い、ほっとしているようだ。
「大庭君、他にはあるかしら?」
「はい、デュエルで勝った後の話があります。デュエルに勝ったら、僕が来るまで絶対ダークシンクロのカードに触らないでください。この中で封印する魔術を覚えているのは僕だけですし、もし下手に触ったら何が起こるかわかりませんので…。」
基の注意を聞いて3人は頷く。未知のカードであるダークシンクロのカード。製作者であるミ・イザナのことを知らない基にもまだ解らない事の多いカードであるため、基は破棄するのではなく、封印を施して能力を封じているのである。

「それじゃあ、これからの事なんだけど…。」
「失礼します。生徒会の皆様に連絡があるのですが…。」
天神が今後について話そうとすると扉の向こうからノックをする音と生徒と思われる人物の声が聞こえてきた。
「話はまた後でね……。はい、どうぞ。」
天神は話を後に回し、来訪者を招き入れた。と言っても、関係者以外を生徒会室に入れる訳にはいかないので、扉の方に立たせたままなのだが。
「それでは、失礼します。生徒会の皆様、特に天神さんに用があります。」
「何かしら?」
「生徒会のOBである穂村 龍一さん、穂村プロが学園にいらっしゃいました。学園祭について話があると言う事で、職員室で待機していただいているのですが…。」
「穂村先輩が!?……わかりました、すぐに向かうと伝えておいてください。」
生徒は天神の伝令を聞いて、扉を閉めて職員室に向かって行った。
天神は穂村が学園に来ていると聞き、驚いていた。同時に、申し訳ない気持ちでもあった。勝手に生徒会を抜け出し、その後もほとんど交流せず、卒業して行った穂村に対して後ろめたい気持ちでいっぱいである。
「天神さん…。」
「大丈夫だって、天神。今の天神は昔の天神と違うだろ。穂村プロも解ってくれるって。」
「吉井君、見城さん…。」
気にかけてくれる二人に勇気づけられ、天神は穂村と会う事に対する後ろめたさを振り払った。むしろ、誠意を持って真正面から会う方が穂村の為にも良いだろうと考え直した。
基も天神の方を見て黙って頷く。基も天神の事を信頼しているのである。
「じゃあ、穂村先輩に会いに行こうかしら。」
「「「おー!!!」」」
天神に先導され、生徒会プラス基は職員室に向かった。

続く
「決闘時空(デュエルスペース)第五話 Part2」へのコメント

By アッキー
2012-11-17 23:50
メイド基くんが萌えすぎて、しかも着替えることないとか素晴らしい!
この格好で廊下を歩き、この格好で会議を行い、この格好で職員室に行くのだと思うと、胸が熱いです。
見城さんはホント良い仕事をしてくれました。彼女の一言が基くんの女装を固定したのだ!
似合ってるなら、それでいい。心底そう思います。明日からの制服は女子のものを是非。

しかし真面目な話、見城さんの言葉って、その場の雰囲気を明るくしてくれるんですよね。
どういう言葉をかければいいのか、困惑してしまった経験は何度もありますが・・・。
そういう計算がはたらいてしまうと、かえって言う言葉が見つからない。
計算抜きでストレートに善意をぶつける人には敵わないなぁと思います。
“何でもない一言”というのが、なかなか言えない。私のような打算的な人間は特に。

さて、対決の方も、さっそく穂村龍一がやってきまして・・・? ワクワク展開。
やはり天神さんとデュエルする展開になるのだと思いますが、いろいろと懸念されることはありますね。
天神さんが勝ったとしても、それが穂村くんとの関係における解決とイコールでない。
かといって負ければいいのかという話でもなく、デュエルの勝敗とは別の何かが必要ですね・・・。

pc
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By 千花 白龍
2012-11-18 15:50
来た、穂村プロ。悪意ある言葉を吐きまくった挙句、デュエルして、負けて…。という展開になるのは予想出来るのですが、その後どうなるんだろう…。救いはあるのか…。(←プロが負ける前提になってる!)

しかし、見城さんは今日も絶好調に真っ直ぐですね。大庭君、まだまだチャンスあるぜ!
pc
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By 呵々闘諍
2012-11-18 21:21
>アッキーさん
基がメイド服着てる理由は元々、決闘時空の主人公を女性にしようとした名残りです。
ただまあ、そうなると見城さんとの絡みが色んな意味で危うくなるので男性の基にしました。
友達よりも、好きな人のために頑張れる人を描きたかったんで。

見城さんみたいな人がいっぱいいると困りますが、いないと逆に寂しいですよね。
こういう人が居るからこそ、輝ける人もいるんだと思います。なので、無理して見城さんの様に振舞う必要は無いかと。
欠けてるものを補い合うのが人間ですから。

さて、天神さんと穂村さんが対峙した時、どうなるのか?待て、次回!
pc
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By 呵々闘諍
2012-11-18 21:25
>千花 白龍さん
穂村プロは先輩なので暴走はさせないつもりです。一応、オリキャラでは無いので株を下手に下げるわけにはいきませんからね(もう遅い)

基はチャンスも何もまだ踏み出していない状態ですね。
チャンスは山ほどあるんですがねぇ…。
pc
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