異・戦国史

妄想掃き溜め専用地下室





2008-08-24(日)
C斬首間近の独白


薄暗い部屋、冷たい床

自分はもう死んでいるのではないかと錯覚させられるような感触。
―否、感触がある…生きているのだ。


―――――――――


遠くでは役人が義務的に罪状を述べている。

その声音は明らかに軽蔑を含んでいて、

『天下人に逆らうからこうなるのだ』

そんな心の声まで聞こえそうだ。
この生涯の中で、随分と人の心を読むのが上手くなった気がする。

―あの人との約束、叶わへんなぁ…―

「全くもってそうだな、弥九郎。」

―…え?―

「直家…様?」

それはこの世にいるはずのない人、そして俺が心を読めなかった数少ない内の一人…

「何を呆けているか、迎えに来たぞ。」

そうだ、約束したのだ、この人と。

「―っすみません!!」

坊っちゃんを…秀家様を護れなかった。この目で、最期まで。

「お前を責めるつもりはない、八郎を西軍につかせたのは…豊臣への恩だ。」

気付けば周りの時間は止まっていて、夢を見ているような錯覚に陥る。
直家様はゆっくりと膝をつき、俺の顔をじっと見つめた。

「もう少し、八郎が立派に成人するまで儂も見てやれば良かった…そうすれば豊臣に頼らずとも。」

「そないなこと。」

「これが人の世か。」

ありません、そう言おうとしたのだか直ぐに遮られた。

「そうだな…お前達が信じた"神"も。"仏"も、いくら祈ろうと救わぬ…これが人の世だ、弥九郎。」


―そうだ、結局最期まで頼りになるのは自分で。神はボクらの事などには無関心で。
それでも…―


「小西行長、最期に言うことはあるか。」

「―…。」

(神の存在など定かではない、不安で、だから信じるしか無かったんだ)

かつての人よ、不甲斐ない自分を許してくれたのですか。



小西行長
「C斬首間近の独白」へのコメント

コメントはありません。
コメントを書く
[*最近][過去#]






[戻る]

無料HPエムペ!