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「贈り物には真心と下心がつき物。(似+万→山)」


新年を向かえ、早1ヶ月も過ぎようとした頃。
街では既に次の季節行事にむけて、華やかに賑わいを見せていた。
店という店を覗けば、ピンク色で甘い匂いを漂わせている。

「さて、バレンタインはどのような趣向でいたそうか…」
「ば…何だって?」
「バレンタイン。新しい流行の習慣でござる」
「新しいもの、ねぇ。相変わらず、流行りモノにだけは敏感だよアンタ」
「だけ、とは聊か心外な」

仕事を終えた万斉と似蔵が街を歩きながら、周りの喧騒に紛れ世間話をする。
万斉にとっては、バレンタインは大いに楽しみな行事でもあったが、対する似蔵の方はその意味すら知らない。知ったところで楽しむつもりも無いらしい。
「バレンタインとは、好いた相手にチョコレートと共に想いを告げる日のことでござる」
「ほぉ。アンタにも一人前に好いた相手が居たのかい。そりゃぁ初耳だねぇ。まぁ、告げて玉砕してきなよ」
「ちょ!。玉砕確定でござるかっ!。せめて応援くらい言って下さらんか」
「アンタに好かれた相手に同情してんだよ。むしろその相手を応援したいねぇ。頑張って諦めさせてやれと、さぁ」
さも感心無さ気に突き放す言葉を掛ける似蔵に対して、言われた万斉はそんな態度に何かを感じたのか、似蔵の顔をまじまじを見つめた。
「…似蔵殿?」
「何だい?」
「もしかして、ぬしは…妬いておるのか?」
「妬いて無いよっ。何言ってんだい、気色悪いっ」
「何とまぁ…、正直でござる」
「なんか言ったかぃ?」
「いや、こちらの話でござる」
似蔵の態度は万斉から見れば、充分に妬いて拗ねているようにしか見えないのだった。
それが、万斉に対してか、はたまたその相手に対してかまでは分からないが、あるいは両方に対してかもしれない。
どちらにしても、万斉にしてみれば似蔵にとって良い心情変化と受け取った。
出遭った頃から紅桜を経て死の淵に落ちたときに比べれば、荒んだ音しか聞こえなかったその心が徐々に情感豊かに変化してきていた。
それは実に楽しい音だった。
そして、その音が自分の想い人にも似ていた。
もう一度聞きたいと、願っていた彼の人。

「ぬしも欲張りでござるな」
「何処ぞの誰かさんのお節介のお陰でね、俗世に貪欲になっちまったんだよ」
「それは良い傾向、欲をなくしては生きてはゆけぬ。ぬしはもっと欲しがれば良い」
「いいのかい?」
「ぬしが欲しいと思うならば、手に入れればよい」
「そうかい。それじゃぁ遠慮なくいただくよ」
「ほう?、して何を?」
ニヤリと、人の悪い笑顔を万斉に向けて見せた。
人斬りの顔とは違う、欲を孕んだ男の顔。
「アンタの、好いた相手」
「何と?!」
似蔵は知っている。
万斉が想っている相手を。
それは、似蔵も心密かに想っている相手。

「まっ、待たれよ!似蔵殿!」
「欲しかったら手に入れれば良いって、言ったのはアンタだろう?」
「ソレとコレとは話が別!。断じて渡せぬでござるよ!」
「そうかい、アンタもせいぜい頑張りなよぉ」
「似蔵殿!!」
楽しそうに笑いながら先を歩く似蔵に、暫く呆然と立ち尽くしていた万斉が我に返り追い縋った。

そんな二人の姿は、賑わう街の喧騒と人込みに中に消えてゆくのだった。

「さて、今年の誕生日は何を贈ろうかねぇ」
「今年は、とは!?。昨年があったのでござるか!」
「坊やと先に知り合ったのは俺だって、忘れたのかい?。初めても相手も…」
「言わんで下され…。今一瞬メラッと殺意が芽生えたでござる」
「どっちが妬いてるんだか…、アンタも充分正直モンだよ…」



<おわり>


山崎誕生日祭りを通り越して、バレンタインネタに飛んでました自分の腐脳。
似蔵さん宣戦布告の話。
万斉と山崎の間にちょっかいを出す似蔵さんが楽しい。

でも、似万視点も含まれている話でもあります。
似蔵さんにも山崎とは別の感情で執着を持っている万斉。妬かれる事も嬉しいらしい。

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