[携帯モード] [URL送信]



「昼下がりの公私務情(呂呂)」
日差しが肌を焼く。
季節が過ぎると共に、居城に住む人々も増えてきた。

城内の調練場に一堂に集まった衛兵たち。
整列した前に立ち、指導するのは太守の呂蒙。仕事の合間に顔を出すのは主君の務めと、民にも兵にも等しく接する。

掛け声と共に汗を流す姿を見て、満足そうに頷く。

元は様々な事情から故郷を離れた、武芸の心得のある者達。
呂蒙の留守中に増える兵士の数は、呂布という鉄壁の副官の存在があるからだった。

「どうだ、少しは仕える兵に仕立てたぞ」
「ああ、これで城の警備も心配はないだろう」

呂蒙と共に現れた呂布の姿に気付いた兵は、途端に身を正し一層鍛錬に励みだす。
その分かりやすい態度の変化に、呂蒙は苦笑いを見せる。

『雑魚は力に群がりたがる』
天下無双の武芸を掲げる呂布の存在は、血の気の多い荒くれ者の抑制に十分な存在だった。
必要悪、とはよく言ったものだと、腕組で堂々と見下ろす呂布の風貌は良くも悪くも指導者としての威厳を醸し出している。
留守の間に何が起きている些細な問題は、全て副官の仕事と任せられるようになった。


しかし、当の呂布本人はと言えば。
「暇だ」
「真面目に指示しろ」
飽き性の一面も持つ故に、長い時間一つのことに専念しようとしない。
更に呂蒙まで職務放棄に巻き込むこともある。特に夜の方で。
「お前が留守の間に充分鍛えている、今更面倒を見ることもあるまい」
「暇なら一緒にやって来い」
「ほう、何時ぞや俺に『調練は自重しろ』と言ったのは何処のどいつだ?」
「…俺だな」

呂蒙が留守中に起きた事件。
破目を外した呂布の天下無双の武芸は、修復したばかりの城壁を木っ端微塵に崩壊した。
しかも、事態を知る者たちに口止めまでしていたという、副官の所業に頭を悩ませた昔が懐かしい。

「暇だ」
「俺が見張っていれば羽目を外すこともあるまい、一緒に汗を流して来い」
「雑魚の相手はせん」

呂蒙の背後から抱きつき、頭の上に顎を乗せため息をつく呂布。
がっちりと拘束する呂布の腕、頭一つ分もある身長差。
同じ武人として少なからず劣等感を抱く呂蒙の心情を知ってか知らずか、呂布は何でもないような事のように夜の事情を口にする。
「手合わせなら、夜伽の呂蒙だけで充分だ」
その方がお互い楽しめると、頭上で呟く声に、数日前の熱い一夜を思い出し一瞬に真っ赤になる呂蒙。
「…呂布よ…今すぐにでも相手をするぞ?、さぁ!構えろぉおお!」
「んぬぉっ!?、いきなり乱舞を出すなぁあああ!!」

突然始まった猛将同士の激しい戦いに、巻き込まれては適わないと逃げる衛兵達。

「丁度よい機会だ!、俺が唯の太守でないことを教えてやろう!」
「よかろう!相手のなってやる、少しは楽しめそうだ!」
「少しどころかたっぷり楽しませてやる!、覚悟しろ!」
「たわけ!、お前ごときが俺に敵うはずなかろう!」
「その自惚れが浅慮なのだ!、負けてからでは良い訳にならんぞ!」
「俺 は ! 誰 に も 負 け ん !!」
「そう豪語して、昨晩の囲碁勝負で負けたのは誰だ!」
「あれは!勝負とは言わんだろうがぁあああ!」
「武勇より知勇を磨けぇえええええ!」
「どちらも中途半端なお前に言われたくないわぁあああああ!」
「中途…っ!、知勇兼備と言えんのかぁああああ!」

ガッ!ガッ!ガッ!
叫びながら互いの得物を振るい、激しくぶつかり合う。
その様は戦場での壮絶な一騎打ちのように見えるが、叫んでいる内容はどう聞いても痴話喧嘩。

「そもそもお前は!」
「えぇい!説教は聞き飽きたわ!」

二人が並べは其処に起きる事といえば、痴話喧嘩か親密な接触かの二つしかない事を、居城での日が過ぎるごとに思い知る衛兵達。

そして、決して二人の間に止めに入るという命知らずな行動はしないと、心に誓うのだった。


今日も居城は平和だった。


<色気抜きの呂呂の触れ合い。但し周囲への被害は甚大>

[*前へ] [次へ#]
[戻る]


無料HPエムペ!