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「お熱いのがお好き?(呂呂)」
部屋の空気が冷えて感じるのは、実際に温度が低いからだろう。
しかし、身体の芯から来る震えは寒さだけではない。寝台で布団に潜り込む様に寝返りを打つこと数回。
寒いはずなのに、妙に顔は火照っていた。

其れが季節の流行り病だと気付いたときには、呂蒙の意識は暗転していた。

「何処で拾ってきたのだ、そんな病」
「ごほっ、う…おそらく先の遠征で…」
「お前は暫く城から出るな、医者の見立てでは一週間は安静だからな」
「げほっ、けふぉっ!」
「薬を飲んで大人しく寝ていろ」
熱に浮かされ、呼吸も落ち着きが無く横たわる呂蒙に、薬湯を満たした杯を手にした呂布が呆れたように言う。
起き上がることすら億劫なのか、顔だけを呂布の方へ向けると、小さな声で詫びる。
どうやら薬を飲む事すらままならないらしい、ならば方法は一つしか思い至らない。
呂布は手にしていた杯に口をつけると、満たしていた薬湯を口に含んだ。
「…りょ…ふ…んっ」
そのまま呂蒙に口付けた。呂布が口に含んでいた薬が流れ込んでくる感覚に、慌てて飲み下す。
喉が鳴る音に、完全に飲んだ事を確信した呂布は、再び口移しで残りの薬を与えた。
口の端から零れた雫を、舌で舐め取り再び唇を合わせる。
「ん…はぁ…っ」
「まだ足りんか?」
「もう、充分だ…」
「続きは、病を治してからだな」
熱で汗ばむ額を撫で、口付けを落とす呂布。
何時もなら羞恥に抵抗する呂蒙も、今はそんな気も起きないのかうっとりとした表情でなすがまま。
上気した肌、伝う汗。
欲情を煽る姿に、つい本能の欲に流されそうになる。

このまま抱くのは簡単だろう、だがその後に得られるものは何も無い。

嘗て辿った経緯を思い返す。
初めて呂蒙と身体を交えた夜、そして明けた朝。

無理矢理受け入れた身体は呆気なく傷付き、初めての行為が心身ともに限界を超えた結果、痛みと熱で床に伏した。

「呂蒙…辛いか?」
「…あぁ」

呂蒙の髪を撫でる呂布の手、横たわる身体を抱き締めるように覆い被さると、掛け布団越しに伝わる胸の動きと呼吸の音。身動ぎせずに重さを受け入れ目を閉じている。

「あの時は、触れさせようともしなかったお前が、今ではこうも素直に身を寄せる…感慨深いものだ」
「あの時…とは?」
「初めてお前を抱いた、その翌日のことだ。無理強いが祟って臥せってしまっただろう?、今の様に熱に浮かされいたな」
「あぁ…あの時は…な」
呂蒙も言われた状況に思い至ったのか、熱とは別の色に頬を染める。
辱められた身体を、張本人である呂布によって介抱された、羞恥と屈辱に苛まれた一日を思い出す。
伸ばされた手を咄嗟に跳ね除け、逃げようとまでした。強いられた痛みに、初めて恐怖心が支配した心。

介抱を拒む呂蒙を責める事もせず、呂布は側についていた。

『この程度で根を上げるとは、軟な身体だな』
『無茶を言うな…っく、初めてでは勝手が分からんというのに…、あんな無体をしおって…っう』
『何?、お前は初物だったかのか』
『この俺の何処を見て経験豊富に見えたのだ、お前はっ!』
『そうか、初物か。此れは良い掘り出し物を得た。文字通り掘り当てたことになるな!』
『笑えん…、誰がうまい事を言えと…っ!』
『案ずるな、次はもう少し優しく扱ってやろう』
『はやり次も…有るのだな…』

そんな遣り取りを交わしたのも、随分昔のように感じる。
言った通りに、その後の呂布は乱暴を振るわなくなった。気まぐれに求め好き勝手に扱われたが、傷付くような無理はしない抱き方が、次第に優しく愛しむ愛撫に変わっていった。

「呂布…もし俺が…初物ではなかったら…あの後はどうするつもりだったのだ?」
過ぎた事で想定するのは無意味だが、聞いておきたい気もした。そんな呂蒙の問い掛けに互いの額を合わせ熱を感じ、ふっと笑みを浮かべて呂布は答えた。
「どうもせん、お前に拒否権は無かっただろうが」
「そうだったな…、すると…貞操を守ってきて助かった訳だ」
「何だ?、俺の為に純潔を守ってきたのか?」
目を閉じたまま、感じる熱が互いの存在を繋ぐ。笑う口元に触れる呂布の唇、逞しい手が頬を包む。
「馬鹿なことを言う、呂布を従えることになるなど、夢でも思いつかんだろう…」
「そうか、だが…夢ではないぞ、嬉しいことにな」
「ふ…そうだな…」
薬が効いてきたのか、次第に呂蒙の意識が霞んでゆく。熱と消耗してゆく体力に引き摺られる様に、眠りの淵へと落ちてゆく。
「眠れ。次に目覚めた時には、もっと優しく扱ってやるぞ…呂蒙」
「ん…頼む…呂布」
呂布の囁きを聞き届けたのか、安心したように呂蒙は眠りに付いた。
浅い呼吸の音を聞き、身を離すとそのまま寝台の淵に腰を降ろす。

「初物でなくとも、お前が拒まなければ優しく扱っていたぞ?」
問われた答えを、聞く事の無い今に言う。

興味半分、脅迫半分で始まった約束の交わりは、互いの情に絆されて今に至る。
結果が満足ならば、始まりが間違いだと言われても悔いは無い。
呂蒙も同じであって欲しい、そう願いを込めて眠る唇に口付けた。


(季節のお約束の風邪で看病ネタ。何度も引っ張るお初の和姦ネタ、本番を書く日は当分ないかと…)
(掘り当てた〜を言わせたかっただけのネタの気がする今回の呂呂。絆され過ぎだ呂布よ…)


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