YOU ARE MY STAR-2(シリウス) 昨日を後悔する今日にはしたくないから 今日を後悔しない今日にしよう ただ人は考えたように生きられないものだから 今を精一杯、生きて ジェームズとリリーのお墓に来るのはやっぱりいつも寂しい。 なまえはふぅ、と溜め息をついた。 今度はリーマスと連絡でも取って2人で来ようか。 連絡がつけばの話だけど。 そう思い2人の墓の前にしゃがみ込み花を供え始めた時。 「…なまえか?」 「え…?」 不意に名前を呼ばれて振り向くと、見知らぬ―…でも見覚えのある男が立っている。 「なまえ…だよな?」 「…誰?」 「おいおい…いくら久しぶりだからってそりゃないだろ。シリウス・ブラックだよ。」 「シリ…ウス?」 確かに、顔はあまり変わっていないような気もする。 だが自分の知っているシリウス・ブラックとは随分印象が変わってしまっていた。 「シリウス…なのね?」 「ああ。久しぶりだな。」 会話が少しぎこちなく聞こえるのは気のせいだろうか。 「ばか…リリーとジェームズがいなくなっちゃったと思ったらシリウスもピーターもいなくなっちゃうし…、リーマスとも最近連絡取ってなかったし…」 「…ごめんな。不安だったよな」 今までずっと不安で、孤独だった。 久しぶりに仲間に会えた安心感から不意に涙が零れてくる。 「相変わらず泣き虫だな。」 「…ばか。」 「もう、1人にしないから。」 その言葉に、ジェームズの昔言ってくれたた言葉を思い出す。 『1人にはしないよ』 思い出が現実に…重なる。 「…ねえ。アズカバン脱獄したの?」 「ああ。」 「こんな出歩いてて捕まらない?」 「自信はないな。普段は犬の姿だ。バレない心配がないわけじゃないんだが…。でも俺はハリーを守らなきゃいけないだろ?」 「うん…。そうだね。」 「犬じゃあ花さえ持って来れないしな。参ったもんだよ。」 そう言ってシリウスは肩を竦めて笑った。 「シリウス。」 「ん?」 「捕まらないでね。」 「勿論。」 悪戯っぽく笑う彼に学生の頃を思い出す。 「私ね、すごく後悔してることがあるの。」 「うん。」 「ジェームズに好きって言わなかったこと。」 二度と逢えなくなるなんて思いもしなかった。 「…うん。」 何度も言おうと考えた。 でも彼のリリーへの想いを知っていたから…。 彼が幸せなら、それで。 「でもね、新聞でハリーのことを見るとね、 ああジェームズ達は確かに生きてたんだって思えてね、…守りたいって思うんだ。」 「そういう所がなまえの良い所だよな。」 そう言ってシリウスはなまえの髪をくしゃり、と撫でた。 「シリウスそうやって髪撫でるの、父親みたいだよ。」 なまえは照れ臭そうに頬を赤らめた。 「そっか。」 もう辺りは真っ暗で、風が冷たい。 「…いっそ、ジェームズになりたかったよ。」 「へ?」 「なまえ。」 「何?」 「俺、生きるから」 「わかってる」 「だから俺が堂々と帰って来れるようになるまで、死ぬなよ」 「うん」 「絶対だからな…」 シリウスがなまえを強く抱きしめた。 「待ってるから帰ってきてね。待ってるから。」 彼の腕の中は心地良かった。 「なまえ…。」 「ん?」 「なんでもない。」 「何よ。」 顔を見合わせて、笑う。 口に出してしまいそうになった『愛してる』はまだ早い。 帰ってきたとき、自分の気持ちを伝えたら彼女はどんな表情を見せるだろうか。 「…それまでは絶対に生きてやるよ。」 小さく呟くとシリウスは二人の墓に微笑んだ。 080910. (戻る) ←→ |