夢のような話
救助
シャワーの音がやけに耳につく。
カチャ
シャワーの音が響くなか小さく扉が開けられる音が聞こえて顔を向ければ、今しが呼んでいた悪友の顔が見えて叫びそうになるのをなんとか抑えた。
龍一はそっと近寄り朱里の手枷と足枷を見て思わず顔をしかめた事に朱里は苦笑した。
龍一はそっと朱里を抱き上げて光輝の部屋を後にする。
お風呂場から聞こえる光輝の鼻歌が聞こえて朱里がうんざりした顔をしたが、これっきりだと思えると光輝の間抜けさに笑えた。
人目につかないようにエレベーターから降りたら、すでに終わっている食堂から裏口へ出た。
そこには食堂の主任と、光輝が朱里を連れ出したときに木陰に隠れて様子を見ていた少年が待っていた。
「花房様、矢野様。この先で車を待たせてあります。」
少年の言葉に龍一は頷いて足を進めた。
朱里は少年の顔を見て眉間に皺を寄せた。
「真下。お前…。」
少年は朱里の言葉を遮るように泣きそうな顔をして頭を横にふった。
「俺は貴方の親衛隊長でありながら、何もできなかった。この後の事なら心配はありません。
自分の身は自分で守ります。
花房様の親衛隊は離れていても貴方の平穏をお祈りします。」
真下が言い終わる頃に車が見えて龍一は朱里を乗せて自分も乗り込んだ。
龍一が窓を開ければ食堂主任が柔らかい笑顔を二人に向けた。
「御二人が私共に"ありがとう。"と"ご馳走さま"と声をかけてくださったことが食堂スタッフにとって嬉しいことでした。
真下様達の避難場所ぐらいにしかなりませんが、私共が協力できることをしていきますのでどうぞご安心を。」
主任の言葉に龍一は礼を伝えて真下に視線を向けた。
「俺と朱里は自主退学をする。
朱里は俺の家が責任もって守るから安心しろ。お前や風紀の奴らには世話になった。」
龍一の言葉が終われば車が走り出す。
真下が涙を溢すのが見えて、朱里は泣きそうになるのをぐっとこらえた。
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