流星群
「星に願いを」の続き
広がるのは、目の冴えるような風景。
真っ黒な空に、煌めく無数の天体。
白い尾を引いて次から次へと降る、光の粒。
神域の男、赤木しげるは、十三歳の、あの夜に戻っていた。
体にまとわりつくぬるい風。
裾の余るTシャツがはためく。
そして隣には、一心不乱に夜空を見上げる、懐かしい面影。
「ああ、思い出したーー」
ゆっくりと瞼を上げると、そこは茜差す縁側だった。
どこかでたった一匹鳴いている、日暮の声が物哀しい。
どうやらいつの間にか眠っていたらしい。
座椅子に体を預けたまま、暮れていく風景を眺める。
昔の夢を見た。人生のほんの一時期、ともに過ごした人の夢だった。
なぜ離れたのか、その理由も思い出せない。
『忘れないでいたい』と願ったことさえ、忘れていた。
迷信深い性質ではないが、あの夜、星にかけた願いが、今叶ったのだと、赤木しげるはそう理解した。
目を細めて思い描く。
とうの昔に会えなくなった人。これからじきに、会えなくなる人。
今はすべてが途方もなく遠く、あの夜の星のように輝いている。
出会い、別れ、すれ違った沢山の人々に、神域の男はふたたび目を閉じ、そっと呟いた。
「ありがとう」
終
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