ハルヒSSの部屋
古泉一樹の情操教育 こぼればなし
『絵本のない彼らの話』


アリノママとカワラナイは違うとかそんなお話


古泉「僕はありのままの貴女が好きですよ」
長門「では家事の習練は必要無い」
古泉「それとこれとは別です。言いましたよね、一緒に勉強しましょう、って」
長門「しかし、変質すれば貴方に好意を抱かれるわたしではなくなってしまう可能性が有る」
古泉「……ふむ。では、もしも涼宮さんの力が消失して僕が超能力を失ったら、貴女に嫌われてしまいますね」
長門「Σ!?」
古泉「それが僕自身とは言いませんが、構成要素ではかなりの大部分を占めているでしょうから。弱りました」
長門「……そんな事は無い」
古泉「はい?」
長門「貴方が貴方であるだけで、わたしは貴方の側に居たいと思う」
古泉「嬉しいですね」
長門「わたしは貴方という個体が変質しても、それを貴方だと認識出来る限り貴方の隣を望む」
古泉「……つまり、そういう事です。貴女が宇宙人であろうと、地球人になられようと、僕も貴女が好きですよ」

長門「……結論」
古泉「料理の本を買いに行きましょう、二人で」
長門「カレーは至高」
古泉「おや、貴女は息子娘に『料理上手な母親』だと思わせたくはありませんか?」
長門「……頑張る」

長門「……(くいっ)」
古泉「なんですか?」
長門「……わたしには誰よりも美味しいと言って貰いたい人が居る」
古泉「はぁ」
長門「……貴方の好きな料理を教えて」
古泉「貴女が作ってくれるなら、きっとなんでも」
長門「『なんでも』が一番難しい」

古泉「ですが、貴女が僕の為に新しい献立に挑戦してくれる、それだけで嬉しいのは紛れも無い事実なんですよ?」


コイにコイ以外はモチコミキンシとかそんなお話


長門「……貴方と、合体したい」
古泉「……長門さん。日本には『据膳食わねば』という言葉が有ります」
長門「知っている。今のわたしはいわゆる据膳」
古泉「……イエスノー枕とか誰から教わりました?」
長門「朝比奈みくる」
古泉「……予想外です」

長門「……ライオンの檻に生肉を放り込めばどうなるかは自明」
古泉「男は狼なのよ、ではありません。むしろ、慎みを薦める歌詞を重要視して下さい」
長門「……」
古泉「……」
長門「……食べないの?」
古泉「(朝比奈さんには今後監視が必要ですね)」

古泉「……『武士は食わねど』という言葉も有ります」
長門「……わたしに性的な魅力を感じないのならば情報統合思念体に身体変更を申請する」
古泉「いえ、そういう事ではなくて」
長門「……」
古泉「……」
長門「…………服装の好みが違った?」
古泉「……今度は誰から聞きかじりました?」
長門「朝比奈みくる」

古泉「……朝比奈さんには僕からイわしておきます」
長門「……そう」

古泉「それで……なぜ突然に、その……」
長門「性交」
古泉「っ……性交、なのでしょうか」
長門「貴方の為」
古泉「は?」

長門「貴方はわたしと触れ合う時に、性的興奮を少なからず抱いている」
古泉「……ああ……ああ……(遠い目)」
長門「端的に言えば、貴方は欲求不満」
古泉「……身に覚えが無いと言えないのが痛い所です」
長門「それはわたし達で言う所のエラー。早急に処理をする必要が有る」
古泉「なるほど。話は分かりました」
長門「これは治療。深く考える必要は無い」
古泉「……そうですね。では……すいません、長門さん」

古泉「……僕とセックスをして下さい」
長門「了承した」

古泉「……」
長門「……」
古泉「…………」
長門「…………」
古泉「………………」
長門「……………………これが、セックス?」
古泉「そうですよ?」

長門「……」
古泉「……」
長門「……わたしの集めた情報との間に誤差が有る」
古泉「まぁ、やり方は人それぞれですから」
長門「明らかに異質……なぜ、貴方はわたしを抱き締めたまま、何もしない?」

古泉「これもまたセックスです」
長門「……説明を求める」
古泉「愛しい人と触れ合う事は愛を交わす事と同義だと言えるのではないでしょうか? 事実、行為の後にする会話をピロートークと呼びますが、これもセックスの大事な一要素ですね」
長門「……貴方はこの行為によって性的興奮を以前増大させ続けている。解消させないと、危険」
古泉「かも知れません。ですが、それ以上に僕は今『しあわせ』なんですよ」
長門「……」
古泉「まさか、分からないとは言いませんよね。昔の貴女ならいざ知らず。今の長門さんなら」
長門「……理解出来なくは無い」
古泉「ですよね。素直な良い子は大好きです」 カイグリカイグリ

長門「……貴方の手が、私の髪を撫でる感触は……好き」

古泉「長門さんの体温を感じます」
長門「……本当にしなくて、良い?」
古泉「ご心配なさらずとも……いずれ貴女は僕が抱きます。必ず。僕はこれでも独占欲の強い方なんですよ」
長門「知っている」
古泉「おや、気付かれていましたか」
長門「貴方の事は……よく、見てるから」
古泉「視線を悟らせないのが、お上手ですね」

長門「……約束。初めての相手は……貴方が良い」
古泉「はい。約束しましょう」

長門「……今ではいけない理由を」
古泉「貴女自身に望んで頂きたいからです」
長門「?? わたしは望んでいる」
古泉「なら『僕の為』なんて言い訳は要らないでしょう。最初から『望んでいる』と。そう仰って下さい」
長門「……分かった。今度はそうする」
古泉「今回、貴女は言い訳をなされました。まるで駆け引きをするように、打算を恋愛に持ち込まれました。それではいけません」
長門「なぜ?」
古泉「恋愛には恋愛以外を持ち込んではいけないからです。それを貴女は考慮なされませんでしたよね。だから、お預けです」
長門「……わたしのミス?」
古泉「いいえ。こうやって一段一段、階段を登る様に、恋愛をしていけば良いんです」
長門「ゆっくり?」
古泉「ゆっくり。焦る必要は、どこにもありません。僕は、貴女の傍を離れませんから」
長門「……そう」
古泉「……はい」

長門「……」 ギュ
古泉「……」 ナデナデ

古泉「ねぇ、長門さん」
長門「何?」
古泉「もっとしあわせになりましょう」

長門「これ以上?」
古泉「今以上」

長門「有るの?」
古泉「天井知らずで」

長門「……嘘」
古泉「いいえ。言ったでしょう。僕は大切な事に嘘は吐きません」
長門「……そう」

長門「……貴方が初めての『好き』で、わたしは『しあわせ』」


スキだからキスをしたくなるのはアタリマエとかそんなお話


長門「……おかえりなさい」
古泉「……ただいま」
長門「……」
古泉「……帰宅して挨拶を交わしただけだというのに睨まれているのはなぜでしょうか?」
長門「身に覚えは無い?」
古泉「……有りませんねぇ……」
長門「……このヘタレが」
古泉「ええっ!?」

長門「わたしは情報生命体。あなた達とは違い『忘れる』という事が無い」
古泉「つまり、過去に僕は何かしらの無礼を貴女に働いたのでしょうか?」
長門「違う」
古泉「では、怒られる道理が有りません」
長門「有る」
古泉「……理由無く怒るのは、長門さんらしくないかと思うのですが?」
長門「無いから怒る」
古泉「ふむ……詳しく聞かせて貰えますか?」
長門「……わたしには貴方に無礼を働かれた記録が無い」
古泉「もっとフランクな関係を望んでいらっしゃるという事でしょうか?」
長門「そうではない。よく、考えて欲しい」
古泉「……」
長門「……」
古泉「ダメです。降参します。何が言いたいのかを教えて下さい」
長門「……鈍感」
古泉「何か言いましたか?」
長門「何も。……わたしと貴方の関係は?」
古泉「……多分、恋愛関係ですね」
長門「……多分?」
古泉「失言でした。恋愛関係です」
長門「そう……わたしもそう考えている」

古泉「……なんか、こう……改めて口にすると照れますね」
長門「羞恥を感じる必要性が理解出来ない。誰に憚る理由も見当たらない」
古泉「それもそうですが……やはり、僕は少し気恥ずかしいです」
長門「……そう」
古泉「はい」

長門「……」ギュゥ
古泉「……」ナデナデ

長門「……わたし達は恋愛関係。恋人同士」
古泉「ああ、理解しました。もしかしなくともデートのお誘いですね?」
長門「図書館は魅力だが、貴方と一緒に先週行ったばかり」
古泉「では、映画でも観に行きますか?」
長門「そうではない。デートの回数に不満は抱いていない」
古泉「では、場所でしょうか? 行きたい所が有れば言ってくれればお連れしますよ?」
長門「違う。もっと根本的な問題」
古泉「根本的……ですか?」

長門「わたし達は一般的な恋人同士が行っている事を一度も行っていない」
古泉「そうでしたか? こうして、ハグなどは常々……」
長門「具体的には、キス」
古泉「……あ」
長門「……一度もしていない」

古泉「わかりました。つまり、その……キスがしてみたい、と」
長門「そう」
古泉「やっと話が通じました」
長門「昨晩、貴方との記録を全て参照して驚愕した。一度もわたし達はキスを行っていない」
古泉「……すっかり済ませていた気になっていました」
長門「盲点だった」
古泉「てっきり描写されていないだけだとばかり」
長門「実は未体験」
古泉「その割に凄いベタつき振りですよね」
長門「初接吻よりも初性交が先になる所だった」
古泉「一生モノの汚点になりかねません、それ」
長門「そうなる前に。……ん」
古泉「……」
長門「……ん」
古泉「……いえ、長門さん。待って下さい」
長門「なに?」
古泉「……長門さんにとっての『初めてのキス』になるんですよね、コレ?」
長門「そう。わたしは産み出されてから三年間、誰とも恋愛関係に至る事無く過ごしてきた」
古泉「では、メモリアルでは有りませんか?」
長門「それが、なに? わたしは貴方がその相手になる事に対して不満は無い」
古泉「ありがとうございます……では、なくてですね」
長門「なに?」
古泉「それがこういった『やった事が無いから』という流れで行われるのは、正直どうかと考えます」
長門「……ヘタレ」
古泉「何とでもおっしゃって下さって結構です。僕は『演出』が好きなんですよ」
長門「知ってる」
古泉「であるならば、相応の雰囲気が欲しい所ですね」
長門「……面倒臭い人」
古泉「性分なので、ご納得下さい」

長門「具体的には?」
古泉「やはり、デートしましょう」
長門「どこへ?」
古泉「どこが良いですか?」
長門「……映画館」
古泉「スタンダードですが、外せないですね」
長門「暗いからたくさん出来る」
古泉「ファーストキスからがっつく気満々ですか」
長門「当然」
古泉「……まぁ、これまでお待たせしてしまった僕にも責任の一端は有るでしょう。付き合いますよ」
長門「……嫌々に聞こえる」
古泉「男性とは、こと恋愛に関して斜に構えたくなる生き物なんです。僕も例外では有りません。本心では喜んでいますので、ご安心下さい」
長門「……貴方の思考トレースは難しい」
古泉「男と女は単純だが、奥が深いと昔から申しますので」

長門「では、早速映画館に向かう」
古泉「お待ち下さい」
長門「……六十秒待つ。外出の用意を」
古泉「何味が良いですか?」
長門「……質問の意図が読めない」
古泉「キスの味です」
長門「キスの……味?」
古泉「はい。例えば映画館への行きがけにバニラアイスを食べたとします。するとその後に行うキスの味は当然ながらバニラアイスになりますよね?」
長門「……キスは奥が深い」
古泉「出来るならば、貴女にとって最高のファーストキスにしたいじゃないですか」
長門「味覚は、大事?」
古泉「外せない要素の一つでは有りますね」
長門「……理解した」
古泉「では何味にしましょう。何でも良いですよ。好きな食べ物を言ってみて下さい」
長門「……カ」
古泉「カレー以外で」
長門「……」
古泉「……」
長門「……カレーではいけない理由を求める」
古泉「……勘弁して下さいorz」
長門「なぜ? カレーの香りは芳醇かつ刺激的」
古泉「長門さんの初キスですが……僕にとっても初めてに当たります。ですから、僕の意向も汲んで両者合意の食べ物にして頂けたら幸いです」

長門「……貴方も?」
古泉「はい、初めてですよ?」
長門「……予想外」
古泉「一体、僕をどういった目で見ていらっしゃったんですか。ああ、皆まで言わなくても結構です」
長門「わたしが……初めて?」
古泉「ええ。お付き合いをさせて頂くのも、キスも」
長門「……そう」

古泉「いずれはそれ以上も、ね?」
長門「(コクコク)」
古泉「なので、至らない点も多々見受けられるかと思いますが、どうか一つよろしくお願いします」
長門「了承した」
古泉「はい。末永く、お付き合いを」

(kiss☆)

長門「……ん」
古泉「……」

長門「……なぜ?」
古泉「すみません。可愛かったので……つい、思わず」
長門「嘘」
古泉「可愛かったのは本当ですよ」
長門「……貴方は最初から機会を伺っていた」
古泉「ええ。その通りです」
長門「貴方は……卑怯」
古泉「型に嵌まるのは、実は余り好きではないんですよ」

長門「……ずっとキスのシミュレーションをしていた為にメモリが足りていなかった。通俗的に言うと注意散漫」
古泉「貴方が仮想状況構築を行う様に、話を誘導しましたから」
長門「映画の話も、アイスの話も、わたしにそれを促す為?」
古泉「はい」
長門「……ズルい」
古泉「キスとは『行うモノ』ですが、同時に『奪われるモノ』でも有るのがお分かり頂けたでしょうか?」
長門「……不意打ち」
古泉「ご馳走様でした」
長門「……貴方は本懐を遂げたかも知れない。しかし、わたしは不服」
古泉「ご希望通りでは無かったからですか?」
長門「違う。初めてはしっかりと記録しておこうと思っていた。だが、突然であった為に対処出来なかった。結論として記録が殆ど残っていない」
古泉「おや、それは困りましたね。……では、長門さん、僕はどうするべきでしょうか?」
長門「……情報を修正する為に再度のキスを望む」
古泉「勿論、喜んで」

古泉「貴女が、好きです」
長門「私も、貴方が、好き」

(kiss☆)

長門「……」
古泉「……」

長門「一度目と二度目との間に大きな誤差が生じている。このままではキスという行為に対してわたしは情報を」
古泉「……黙って」

(kiss☆)

長門「……」
古泉「……」

長門「……ぷぁ」
古泉「……ふぅ」

長門「……コーヒーを飲んできた?」
古泉「貴女はチョコレートですね」

長門「……次は……いつ?」
古泉「決まっています」

古泉「『今』、『すぐ』にでも」

(kiss☆)

(kiss☆)

古泉「ねぇ、長門さん。恋愛映画の閉めって大体パターン化されているんですよ」
長門「……そう」
古泉「……もしも映画であったなら、こういった場面ではカメラに向かってカーテンを閉めて幕となりますね」
長門「……閉める?」
古泉「ええ。これ以上は、僕たち二人だけの秘密です」
長門「分かった。……立ち上がる前に」
古泉「はい」

(kiss☆)


地を這うムシは君のエガオの為にソラを飛んだとかそんなお話


古泉「……僕は貴女より後に死のうと思います」
長門「なぜ?」
古泉「だって長門さん、寂しがり屋じゃないですか」
長門「……」
古泉「ほら、またしがみつく」
長門「好きだから……仕方の無い事」
古泉「……はい」

長門「なぜ……そんな事を言うの?」
古泉「ふと思った、ただの戯言です。聞き流して下さい」
長門「……別離を回避する方法が有る」
古泉「なんとなくで良ければ何を言いたいのかは理解しました。しかし、それは却下です」
長門「……どうして?」
古泉「そんなものに頼らなくても……長門さん、見えませんか?」
長門「何が?」

古泉「縁、です」
長門「……エン?」

古泉「運命って余り信じない方なんですけどね、実は」
長門「必然は無い。偶然が過去になった為に必然と錯覚するだけ」
古泉「同感です。だけど……長門さんに出会えた。この奇跡だけは偶然だと思いたくないんです。なぜでしょう?」
長門「……運命?」
古泉「そこまで大仰なモノでもないでしょうけど……ね」

長門「貴方とわたしが出会ったのは偶然でしかない。思念体が涼宮ハルヒの側に送り込むインターフェイスはわたしでなくとも良かった」
古泉「僕の側も、ほかに数人の候補が居ましたね」
長門「結果としてわたしが選ばれたが、しかし偶然」
古泉「……果たして、そうでしょうか?」
長門「……必然?」

古泉「涼宮さんが望まない事は彼女の周りでは起こらない。起こせない。起こり得ない」
長門「そう。彼女の望み通りに、宇宙は動く」
古泉「であるならば、僕らの出会いも神様が紡いだ赤い糸なのかも知れませんよね?」
長門「赤い糸……って何?」

古泉「人間は心臓から目に見えない一本の糸が出ているそうです」
長門「不可視ならば色を確認する事は出来ない筈。説明を求める」
古泉「過去に見えた人でも居たのではないでしょうか?」
長門「矛盾する。見えないものを見る事は出来ない。過去であってもそれは変わらない」
古泉「前にも言いましたよね。ヒトには個体差が有ると」
長門「記憶している」
古泉「大多数には『見えない』。ですが『見える』人も、様々に多様化する人類の中にはごく僅かに居ても不思議は有りません」
長門「……貴方達みたいに?」
古泉「そう言えば僕も『超能力者』でしたね。此処最近の平穏に、すっかり自分の特異性を失念していました」
長門「……うっかりさん」
古泉「話を戻します。その、心臓から伸びた糸は左手の小指から、するすると外に出てしまっているそうで」
長門「……糸の先はどうなって?」
古泉「その先は誰かの左手小指から体内に入り込み、心臓に絡み付いていると言われています」
長門「……で?」

古泉「運命の相手、だそうですよ」

長門「何が?」
古泉「糸で繋がれた者同士です」
長門「……宿命のライバル?」
古泉「不倶戴天の……違います。ラヴァーズです」
長門「そんな事が分かるの? 見えないのに?」
古泉「分かるんです。見えないのに」

長門「……貴方の指先からも……此処からも糸が伸びている?」
古泉「くすぐったいですよ、長門さん」
長門「……触れない」
古泉「そういう言い伝えが有りますよ、というお話です」
長門「心臓から、心臓に?」
古泉「はい。……貴女に心臓は有りますか?」
長門「わたし達の身体は基本的な構造において貴方達と変わらない。ただ、そこに搭載されているソフトが異なる」
古泉「心臓が有るなら、十分です」
長門「何が、十分?」

古泉「僕が優しい運命を信じる、その根拠ですかね」

長門「……解説」
古泉「貴女も例外ではない、という事ですよ」
長門「わたしの小指からも赤色の糸が伸びている?」
古泉「ええ、伸びています。綺麗な、色をしていますね」
長門「……また、嘘」
古泉「おや、これは心外です。僕にそれが見えていないと、どうして貴女に言い切れるんですか?」
長門「……簡単」

長門「貴方が糸の続く先として視線を向けた、その方向が間違っているから」

古泉「……僕とした事が、しくじりました」
長門「わたしの小指から続く糸が、繋がっている可能性の有る人はこの世界に一人しかいない。他の可能性は……無い」

古泉「……その相手は、貴女にそこまで想われて、きっとしあわせでしょうね」
長門「そうだと嬉しい。その人がしあわせだと、わたしもきっとしあわせ」

古泉「可能性を……まさか、計算されたんですか?」
長門「……」
古泉「……長門さん?」
長門「……計算した」
古泉「眼を逸らさずに嘘を吐くのは止めましょうよ」

長門「その人以外と恋愛関係になる状況を仮想構築しようと試みる、それだけでエラーに阻まれる」
古泉「でしょうね」
長門「……なぜ?」
古泉「決まっているでしょう?」
長門「分からない。教えて」
古泉「貴女には既に唯一に想う恋人が居るから、ですよ」

長門「……よく、分からない」
古泉「おやおや、冗談でしょう。今の貴女なら分かる筈です、長門さん」
長門「……教えて。貴方の声で。貴方の言葉で。わたしにそれを教えて欲しい」
古泉「もしかして、僕に甘えていらっしゃるのですか?」
長門「……教えて?」
古泉「かしこまりました」

古泉「僕が、貴女の唯一無二の、運命の恋人だから、です」
長門「……そう。なら、わたしは貴方の唯一無二の、運命の恋人になる」

古泉「運命って言葉も、こんな時だけなら嫌いではありません」
長門「不思議な……言葉。貴方が言うと、信じたいと感じる」
古泉「僕は嘘吐きですけどね」
長門「貴方の嘘になら、わたしは騙されても構わない。たくさん騙して、欲しいと、そう、思う。願う」

古泉「……良いんですか?」
長門「……貴方だけ。……特別」
古泉「ねぇ、長門さん」
長門「何?」
古泉「『嘘から出た真』という言葉が有るんですが」
長門「……そう」

古泉「僕が、貴女の最期を、見送りますよ」
長門「……嘘?」
古泉「今のは『大切なこと』です」
長門「……信じても、良い?」
古泉「強制はしません。肯定も、出来ません。けれど貴女が信じてくれるなら、きっと」

古泉「僕は空だって、飛んでみせます」

古泉「もしもこの縁を結んだのが涼宮さんだとしたら、余り未来に関してナーバスになる必要は無いでしょうね」
長門「……涼宮ハルヒは、わたし達を祝福してくれる?」
古泉「仲人が祝福しない訳には、いかないでしょう?」
長門「……そう」
古泉「自分達の恋愛を進展させる為に、身近にこういったカップルを成立させて彼を刺激しようと、そう考えたのではないかと推測出来ます」
長門「二人がしあわせになれば、わたし達もしあわせになれるという事?」
古泉「恐らくは。ただ、僕は現状でも十分にしあわせなんですけどね」
長門「……貴方は以前にまだ先が有ると言った」
古泉「はい。よく覚えていらっしゃいますね」
長門「わたしはそれを経験してみたい」
古泉「異論は有りません」
長門「……後は『彼』次第?」
古泉「ですね。二人が上手くいけば、僕らも自然と収まるべき所に収まるのではないでしょうか」

長門「……ダブルデートを提案する」
古泉「とても良いお考えかと」
長門「あの二人にはわたし達の為にも恋仲になって貰う必要が有る」
古泉「見事なまでに余計なお世話ですねぇ」
長門「ダメ?」
古泉「まさか。得意分野ですよ」

長門「しあわせの、お裾分け」
古泉「貴女は今、しあわせですか?」
長門「わたしは、しあわせ」

長門「貴方が今すぐキスしてくれるなら、きっと、もっと、しあわせになれる」


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