4649
8
「あ、俺、教員室行かなくちゃいけないから。」
「おう、じゃ先行くな。」
結城が手を挙げたので挙げ返すと微笑まれた。
意味がわからないけれど、これで正しかったのだろう。
俺は高校からの外部生だから、初めてクラスに入るときに、担任からの紹介があるらしい。
そのせいで、担任のところに行って、それからクラスに行く。
もうクラスはわかっているし、そんな面倒なことをする必要がどこにあるのか、俺にはよくわからない。
紹介されてもわかるのはせいぜい名前くらいだろう。
俺だってそれ以上のことを知ってほしいとは思わない。
それとも、一番初めに、関わらないでとでも言えと?
そんなの言ったところで興味を持つやつは持つだろうけど。
だったら態度で示すほうが楽だ。
「失礼します。」
一応きちんと挨拶をしてから入る。
俺は非常識だけど、それが発揮されるのはそれをするのに見合った場面だけ。
常識を持ち合わせてないわけじゃない。
入った瞬間に、沢山の視線がしかも一斉にこちらに向く。
ほんの一瞬。
沈黙が流れる。
誰も言葉が出せなかった。
それに叶多が少し眉をひそめた瞬間。
「藤原叶多で、間違いないな?」
奥の列に座っていた一人の男が立ち上がる。
椅子のきしむ音はしなかったけれど、代わりに、叶多の声が響いた。
「…はい。」
(何なんだ、この学園のやつら。)
イカれてるのは、どうやら俺達だけじゃないらしい。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!