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* 叶多 side *
そのまま、林に入って、20分。
つまり今の時間は8:40。
教室ではHRが始まっている頃だろう。
なんとなく、結城は起きてないような気がした。
由奈が起こしに来ないということは、朝によっぽど弱くて毎日ああなのかもしれない。
それに薄々気付いていた自分もいる。
でもだから起こさなかったと言ったら、同室者なのになんだ、と思われてしまうんじゃないかとも思って。
要するに、面倒だから放棄したのだ。
それを否定するつもりはない。
本当のことだし、これが結城にばれたとしても多分俺は否定しないのだろうと思う。
嫌われたくないだなんて感情は、もとから俺の中にはないから。
理解はできるけれど、それはまた別の話だ。
もしかしたらほんの少し、離れて欲しくないという気持ちはあるのかもしれないけれど…
いつか無くなるべき俺が、周りに何かを期待するなんて、やってはいけないことだ。
…あり得ない、そんなこと。
突然視界が開ける。
切り開かれた、小さな広場のような場所。
真ん中近くに、南に向かってベンチが一つ、置いてあった。
誰もいない。
(まぁ、当然か。)
この学校なら、サボっているやつがいるかもしれないとも思ったのだけれど。
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